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 論創社の今月分は、H・C・ベイリー 『フォーチュン氏を呼べ』とジョン・エヴァンス 『悪魔の栄光』の二冊。世間的にはもちろんベイリーの短編集が注目なのだろうが、もう一冊の『悪魔の栄光』だって、ハードボイルド好きにはちょっとした事件である。なんせこの「栄光」シリーズ。過去にポケミスと河出書房から何とか三冊までが刊行されたものの、なぜか途中の一冊だけが翻訳されないまま残っていたのである。それが半世紀を経ていきなり読めるというのだから驚いた。ちなみに帯にも誇らしげにその旨が記してあるが、なぜか推薦文は法月綸太郎である。マイナーなハードボイルドなのになぜゆえ法月綸太郎? けっこう謎解き要素が強いのか? それとも本格好きを騙して買わせようとか、そういうことじゃないよね、まさか。

 読了本はジョン・グリシャムの『スキッピング・クリスマス』。リーガル・サスペンスで一世を風靡したグリシャムが書いたコメディである。本来ならやはりクリスマス・シーズンに読むのがよいのだろうが、まあいいや。
 一人娘のブレアが外国に行ってしまい、クリスマスを二人で迎えることになった会計士ルーサーと妻のノーラ。ルーサーはかねてからクリスマスの騒ぎを快く思っていなかったため、今年のクリスマスはカリブ海へクルーズに出かけようとノーラに提案する。だが、この決断には大きな波紋が。クリスマスカードやクリスマスツリーの業者はもちろん、慈善用品を売りに来る警察官に消防士、そしてパーティーを楽しみにするルーサーの同僚やノーラの友人たち。それはまるで町中が二人の旅行を妨害するかのようであった。しかしそんな苦難を乗り越え、ついに旅行へ出発する当日がやってきた……。
 よくあるタイプの話で、うまくクリスマスに絡めているのは、さすがグリシャムといったところか。基本的に読者が感動するツボをわかっていて、それを狙いすぎるから、『法律事務所』などを書いていた初期には逆に批判する人もいたのだろう。それをいえば本作は「あざとさ」の極地。だが、重めの法廷ものではなく、本作のように軽みが身上の話だとそれも気にならず、まずまず楽しめる作品に仕上がっている。
 ただ、クリスマスのバカ騒ぎについては、圧倒的にルーサーの言っていることが正しいと思うわけで、その真実がむにゃむにゃになってしまうラストは、個人的にはなんだかなぁと思ってしまった。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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