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 コロナの影響もあって仕事も落ち着かないのだけれど、この週末はついに東京都では外出自粛。ニュースを見ていると銀座も渋谷も浅草も結構店が閉まっていて、歩行者も相当減っているようだ。そんななか人が少ないだろうというのでパチンコ店には逆に長蛇の列ができているとのこと。それこそ密閉状況、隣の台とも近いし、おまけに年齢層もかなり高いようで、何をやっているのやら。自分だけが病気になるのならいいが、ウイルスを持ち帰っている輩も多いのではないか。


 そんなわけで本日は近所へ買い物に出たぐらいでおとなしく読書。といっても十数ページ程度の短編で、湘南探偵倶楽部さんから届いたばかりの伊東鋭太郎『弓削検事の実験』。
 T大学の研究室で起こった教授殺害事件を描く。事件発生時の状況から容疑者はごく限られているが、犯人の巧みな工作によって捜査は誤った方向へ。そのとき弓削検事は…‥。

 弓削検事の実験

 そもそも伊東鋭太郎って誰だ?という話なのだが、管理人も全然知らない作家で、おそらくアンソロジーとかでも読んだことはないはず。湘南探偵倶楽部さんの案内文、ネットや若狭邦男『探偵作家発見100』でなんとか情報をかき集めてみると。
 伊東鋭太郎は京都出身。明治34年生まれで享年昭和38年、つまり六十二歳で亡くなったことになる。本業はロシアやドイツ、フランス文学の研究者らしく、昭和初期にはかなりの翻訳を手がけており、ミステリ関係ではシムノンを多く訳しているのが目につく。
 その流れもあってかミステリの創作も手がけるようになるが、著者はもうひとつ別の顔も持っており、それが軍事外交の研究家としての顔である。ノンフィクションも書いているが、創作でもそちら方面の知識を活かし、スパイものや諜報ものが多いと思われる(タイトルから想像しただけで実際に読んだわけではないので念のため)。
 ちなみにそのときどきで複数のペンネームも駆使しており、道本清一郎、道本清一、伊東瑛太郎、伊東鍈太郎となかなかややこしい。

 さて、話を「弓削検事の実験」に戻すと、こちらはスパイものではなく、密室ネタを中心にした純粋な本格仕立て。かの『新青年』が「新人十二ヶ月」という企画を始めた際、その一人として著者が選ばれ、本作が掲載された。
 まあ、短い話で登場人物も少なく、トリックもさほどではないけれど、推理や論理の展開はしっかりしており、案外楽しむことができた。
 何より気になったのは弓削検事の行動であり、決着のつけ方である。著者はロシア文学研究者でもあるのだが、そこかしこに『罪と罰』の影響を強く感じることができた。著者なりにアレンジした節が伺え、これはもっと長いものにするとより読み応えは出た気もするが、ただ、そうするとミステリとしては弱くなっただろうし、なかなか難しいところだ。
 ともあれ初・伊東鋭太郎作品ということで個人的には満足。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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