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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ランドル・ギャレット『魔術師を探せ!』(ハヤカワ文庫)

 本日の読了本はランドル・ギャレットの『魔術師を探せ!』。有名な作品ではあるが、今回初めて読んでみて、今更ながらにその面白さににんまり。なるほど、これは企画の勝利だわ。

 『魔術師を探せ!』はジャンルでいうならSFミステリ。だが、アシモフやホーガンらのそれと本作が大きく異なるのは、SFではなくファンタジーとして書かれた点にあるだろう。本作はなんと、科学の代わりに魔術が発展したというパラレルワールドのイギリス(ちなみに作品世界では英仏帝国、そうイギリスとフランスが一緒になってしまっているのだ)を舞台にした本格探偵小説なのだ。

 犯罪にも捜査にも魔術が使われる世界。それは一見するとなんでもアリの世界のようにも思えるが、魔術の使用に際しては厳格な法規があり、また、その効果にも一定の法則がある。作者がこの部分をしっかりと構築しているからこそ、魔術世界を本格ミステリのコードで語ることが可能になったのだ。作品世界に馴染むまでは少し骨だが、それさえクリアできれば文句なく楽しめる一冊。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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