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 先日、河出書房新社の野村胡堂『奇談クラブ』と国枝史郎『沙漠の古都』が出ている頃だと思い、書店で探したのだが、まったく見つからない。発売が遅れたかと諦めかけたそのとき、ふと見た単行本の新刊コーナーにその二冊が鎮座しているではないか。ううむ、てっきり〈KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ〉だと思っていたから文庫棚ばかり探していたよ。これがなんと単行本の新シリーズだったのね。
 なんとことをTwitterでつぶやいたら、当の河出さんから「今週、この問い合わせお電話が。殺到いたしました。河出書房新社のやること、紛らわしくてすみません。下記書籍は単行本の文芸書コーナーをお探しください!」などとコメントされる(苦笑)。そう、河出さん、これはちょっと宣伝が足りなかったようですね。みんな、絶対、勘違いしてる(笑)。


 本日の読了本はラング・ルイスの『友だち殺し』。本邦初紹介の『死のバースデイ』がかなりよかったので、本作も期待して読み始めたのだが、これがまたなかなかの良作でありました。

 まずはストーリー。
 母校に医学部長コールダーの秘書として勤務することになったケイト。彼女の前任者・ガーネットは学生の人気を集めながら、謎の失踪をしており、今でもみながその件に関して疑問を抱いていた。ところが、ケイトが医学生のジョンに学内を案内してもらっているとき、解剖用死体保管室で、彼女の死体が発見される。コールダーは知人のタック警部補に事件の調査を依頼する……。

 友だち殺し

 物語の序盤は学部長秘書ケイトを中心として展開するので、最初はややサスペンス風味の方が強めだけれど、タック警部補が登場するあたりからいつしかオーソドックスな本格探偵小説の流れとなる。学生同士のやりとり、あるいはタック警部補の上司や部下とのやりとりがけっこうユーモラスで、その雰囲気もあって本作が基本的には上質な本格ものであることを期待させる。
 そしてその期待はまったく裏切られず、謎解きという観点ではやや弱いところもあるのだけれど、中盤以降で徐々に明らかになる事実には驚かされるし、伏線の回収については非常に鮮やか。明かされる真相には、なんでこれに気づかなかったのか、自分の迂闊さうを呪うばかりである。それぐらい著者の語りとペース配分が巧い。

 ただ、最終的な真相については(あくまで個人的な感想だが)、余計な気がしないでもない。著者の抱えるテーマを効果的に加えたかった気持ちはわかるが、どんでん返しは二つも三つもいらない。一発で決めてこそどんでん返しであり、そのテーマもインパクトも生きる。その点が残念といえば残念なところだ。
 とはいえ本作は著者のデビュー作。欠点も見られるのは仕方ないところだし、『死のバースデイ』には及ばないものの十分に楽しむことができた。作品数もそう多くはないので、論創社さんにはぜひ残りも訳出してほしいものだ。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 ラング・ルイスの『死のバースデイ』を読む。
 初めて読む作家だが、日本ではもちろん海外でも知名度はそれほど高くなかったらしい。主に活躍したのは1940年代。数作の長編を発表したもののそれきり創作は途絶え、作者の名が再浮上するのは1970年代に入ってからのことになる。アメリカのミステリ愛好家ジャック・バーザンとウェンデル・ハーティッグ・テイラーの監修していた古典ミステリの復刻シリーズに本作が採用され、これをきっかけに再評価の声が高まったようだ。

 とまあ、解説の受け売りはこのくらいにして、ストーリーを紹介しよう。
 主人公は映画脚本家のヴィクトリア。映画プロデューサーのアルバートと再婚したばかりだ。ヴィクトリアの原作をアルバートがプロデュースするという、二人の共同作業となる企画も順調に進行し、幸せな毎日を過ごしていたが……。なんとヴィクトリアの誕生日の朝、アルバートが客間で毒殺されるという事件が起こる。しかもそれは、ヴィクトリアが書いた小説を再現するかのようにそっくりだった。いったい夫婦の間に何が起こったのか?

 いやー、これは拾いものである。始めから終わりまで、しっかり餡の詰まったミステリというイメージ。派手さはないが、丹念に丹念に書かいているという印象を持った。とりわけ登場人物の描写が素晴らしく、しかも登場人物=容疑者を極力限定し、そのうえで探偵小説的興味を持続させるテクニックはなかなかのものだ。
 謎解きも十分なサプライズを用意しており、そればかりか「探偵が容疑者一同を集めて謎解き」という演出までを策として用いる周到さ。さらには各登場人物に最後までドラマを与えようとするサービス精神も見事。
 論創海外ミステリの中でも本作は屈指の出来ではないだろうか。お勧め!


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