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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

デイヴィッド・ハンドラー『殺人小説家』(講談社文庫)

 デイヴィッド・ハンドラーの『殺人小説家』読了。
 元売れっ子作家にしてゴーストライターのホーギー。そんな彼のところへ1章分の小説と手紙が送られてきた。その出来の良さに驚いたホーギーだが、翌朝その小説に書かれたとおりに殺人事件が発生する。いったい誰が、何のために? 警察の捜査も開始されるが、それをあざ笑うかのように第二の殺人が起こり、小説の第2章も送られてくる。このときホーギーは、警察に話せないある事実に気がついていた……。

 まずは及第点といってよいだろう。シリーズのファンなら、ホーギーとルルやメリリーとのやりとりだけでも十分楽しめるし、やはりその点が一番の魅力だとは思う。だがハンドラーの偉いところは、それで満足することなく、ミステリーとしてもしっかりツボを押さえた作りを実現している点だ。本作でもパズラーに負けないぐらい伏線や手がかりを配し、きれいにオチを決めているのはさすが。傑作とまではいかないが、誰にでも安心しておすすめできる良心的な一冊である。
 ただ、本書を最後に本国ではシリーズが途絶えているらしく、それがなんとも残念だ。やや印象的なラストシーンではあるが、ここで打ち止めにするようなラストでもあるまい。しばらくは別シリーズで鋭気を養い、またホーギーの復活を願うばかりである(シリーズが復活した際は、トレーシーがけっこういい役回りで登場しそうな気がする。あくまで予想だが)。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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