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 実はしばらく前から禁煙を始めた。保険の審査に二度ばかり続けて落ちてしまい、考えられる理由が喫煙しか思いつかなかったためである。わりと形から入るのが好きな質なので、病院で禁煙治療をすることにし、禁煙パッチなるものをゲット。ニコチン摂取は行いながらも、まずは喫煙習慣をなくし、なるべく無理せず禁煙をしようというものだ。
 とりあえず本日でちょうど一週間。意外と順調に禁煙できており、禁煙パッチもあまり貼らずにすんでいる。ときには無性に吸いたくもなるのだが、そこはガムとかで気を紛らわす。
 かかりつけの医者がいうには、もし一本吸ってもそこで失敗したとか思うのではなく、何事もなかったかのように禁煙を続けることが大事らしい。

 朝山蜻一の『真夜中に唄う島』読了。表題の長編に加え、1976年より雑誌『幻影城』に連載された幻想短編をまとめた『蜻斎志異』の二本立てというお買い得版だ。

 まずは『真夜中に唄う島』だが、これは一種のユートピア小説といってよいのだろう。
 新宿でホステスを輪姦した若者たちだが、そのホステスが何者かに殺されてしまうという事件が起こる。殺人罪に問われることを恐れた彼らは、東京から逃げ出すことを決意。そのときたまたま知った「太陽島」へ向かうことになる。しかし、太陽島は普通の南の島などではなく、あらゆる自由を保障された不思議な楽園だったのだ……。
 いや、これは凄い。先日呼んだ『白昼艶夢』の世界の集大成ともいうべき作品であり、それはとりもなおさず朝山蜻一ワールドの集大成でもあるということ。太陽島ではあらゆることが自由であり、思想から行動、食生活、セックス、すべてが保証されている。とりわけ性行為については、それこそ『白昼艶夢』の各作品のエピソードをぶちまけたような感もあり、その中で作者は人間のさまざまな営みについて考えようとする。極めて特殊なエロスを全面に打ち出しながら、その他のエロ小説と大きく異なるのは、この視点の差に他ならない。
 殺人の謎やラストの持っていき方など、強引すぎる部分もあり、ミステリとして評価できるものではないが、朝山蜻一を語るとき、決して忘れられない作品になるのだろう。

 『蜻斎志異』は上でも書いたとおり、『幻影城』に連載された幻想短編集。意外にも『白昼艶夢』の諸作品とは違い、エロスの味付けを含みながらもしっかりとした幻想小説という印象だ。作者が晩年のときの作品ということで、多少は枯れてきたことがいい結果につながったのか(笑)?


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 藤原編集室さんのサイト「本棚の中の骸骨」によると、先般終了とあいなった晶文社ミステリのために用意していたものが、秋頃に河出書房新社から新シリーズとしてスタートすることになったそうな。とりあえずジャック・リッチー短篇集 『10ドルだって大金だ』(仮題)、マイクル・イネス 『アララテのアプルビイ』、グラディス・ミッチェル 『The Mystery of a Butcher's Shop』などが進められるらしい。奇想コレクションといい、河出、本当にがんばってますな。
 ただ、河出といえば、本格ミステリコレクションの第二期とかの予定はないのですかね? 宮野叢子とかすごく読んでみたいのだが。

 本日の読了本は朝山蜻一『白昼艶夢』。ロバート・ブロックに続いて異色作家つながり。ただ、異色度は朝山蜻一の方が遙かに上だろう。なにせフェチシズムやSMといった特殊な性愛をテーマにこれだけミステリを書いた人は他に類を見ない。収録作は以下のとおり。

「くびられた隠者」
「女には尻尾がある」
「白昼艶夢」
「楽しい夏の思い出」
「不思議な世界の死」
「ひつじや物語」
「巫女」
「死霊」
「人形はなぜつくられる」
「泥棒たちと夫婦たち」
「虫のように殺す」
「変面術師」
「矮人博士の犯罪」
「掌にのる女」
「僕はちんころ」
「天人飛ぶ」

 「くびられた隠者」や「白昼艶夢」はアンソロジーでもよく採られる代表作。ネタがSMだけに人によっては嫌悪感を抱くだろうが、基本的に文章のこなれた作家なので、安っぽいエロさは感じず、その異常嗜好にはまる人々の心情や転落の様子がリアルに迫ってくる。
 しかしながら、ここまでくると別にミステリにする必要はないのではないだろうか。実際、ミステリとしての仕掛けも大したことがないうえ、作品のテーマやプロットも似たようなものが多いわけで、作者が書きたいのはミステリではなくあくまで人間の性愛なのだろう。それが昇華・消化できていない作品はやはり評価も低くなる。前述の代表作はいいとして、「ひつじや物語」「変面術師」あたりはいったいどう評価したらよいものやら。
 ちなみに朝山作品であと手軽に読めるのは扶桑社文庫『真夜中に唄う島』ぐらいだが、こちらは長編を二つ収録したもの。この特殊な味が長編でどう活かされているのか、これも近日中に試してみることにしよう。


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