Posted in "国内作家 日影丈吉"
- Category: 国内作家 日影丈吉 04 14, 2018
- 日影丈吉『内部の真実』(創元推理文庫)
- 日影丈吉の長編はまだいくつか読み残しがあるのだが、実は傑作の呼び声も高い『内部の真実』を読み忘れていた。昨年の暮れに創元推理文庫版が出て未読であることに気がつき(全集をもっているというのになんという体たらく)、ようやく読了した次第である。 こんな話。 舞台は太平洋戦争末期の台湾。そこで日本軍人同士の決闘騒ぎが起こる。一方の苫曹長は銃殺され、もう一方の名倉という兵隊は頭部を殴打され、意識不明の状態...
- Category: 国内作家 日影丈吉 07 11, 2010
- 日影丈吉『夕潮』(創元推理文庫)
- 日影丈吉の最後の長篇となる『夕潮』を読む。本書はまず刊行されたエピソード自体が面白い。有名な話なのでファンやマニアの方々は何を今さらと思うだろうけれども、一応簡単に紹介しておこう。 本書は1990年に出版されたハードカバー版の文庫化作品だが、初出は1979年にまで遡る。かの有名な探偵小説誌『幻影城』に、まず前半が掲載された。ところが経営に苦しんでいた版元が倒産し、当然ながら雑誌も廃刊。残りの原稿は発表さ...
- Category: 国内作家 日影丈吉 05 27, 2008
- 日影丈吉『女の家』(徳間文庫)
- 日影丈吉の『女の家』を読む。印象的なミステリを多く残した著者の作品群の中でも、とりわけ叙情性にあふれた傑作のひとつである。 銀座の裏通りにある一軒家で、主人の雪枝がガス中毒によって死亡した。雪枝は実業家である保倉の妾で、一人息子の幸嗣、そして三人の女中と共にひっそりと暮らしていた。所轄の小柴刑事は調査を開始するが、雪枝はかつて息子の家庭教師と不義の関係にあり、自殺未遂の過去もあったことが判明。...
- Category: 国内作家 日影丈吉 06 04, 2007
- 日影丈吉『咬まれた手』(徳間書店)
- エッセイや評論などを読んでいたりして、たまに目にするのが短編型とか長編型とかいう言い方。どちらかに特化した、あるいは得意とする作家というわけだが、さしずめエドワード・D・ホックなどは短編型作家の代表格だろう。また、日本の作家でも、江戸川乱歩などは本質的に短編の作家である、なんていう記述を見かけたりする。 ところが何となくそういう刷り込みをされているものの、ふと気がつくと現代の作家は、意外と長編も...
- Category: 国内作家 日影丈吉 05 09, 2007
- 日影丈吉『一丁倫敦殺人事件』(徳間書店)
- ROM128号が届く。コニントンやコール夫妻、ジョン・ロードを初めとした英国本格派特集ということで、正にクラシックブームのど真ん中を行く作品が紹介されている。 気になったのは長崎出版の今後の刊行予定。HPで既に紹介されているエドガー・ウォーレスやスーザン・ギルラスなど以外にも、マイケル・ギルバートやグラディス・ミッチェル、エリザベス・デイリー、コニントンなどの名が挙がっている。とりわけ驚いたのはM・D・ポ...
- Category: 国内作家 日影丈吉 05 02, 2007
- 日影丈吉『殺人者国会へ行く』(ベストブック社)
- 日影丈吉の『殺人者国会へ行く』を読む。全集がある現在はともかく、ちょっと前まではなかなか入手しにくかった本である。管理人も長らく探していたが、先日、ネットオークションにてラーメン2杯分でようやくゲット。やっと読むことができた次第である。まずはストーリーから。 衆議院予算委員会の二日目。野党である労社党の代表質問に立ったのは、副委員長の江差。彼はあるコンビナートの廃棄物処理に絡む汚職問題について、...
- Category: 国内作家 日影丈吉 04 05, 2006
- 日影丈吉『多角形』(徳間文庫)
- 日影丈吉の『多角形』読了。 月刊誌「木星」の編集長、落合のもとへ無名の作家から投稿原稿が送られてきた。伊豆のある地を舞台に、新旧の病院の対立を背景にした推理小説である。技術的にはさほどのことはないと思われたその小説だが、不思議と落合を惹き付けるものがあった。ただ、後半が省かれていたため、どのようなラストが待ち受けているのか判らず、犯人もトリックも伏せられたままであった。 落合は休暇がてら作品の舞...
- Category: 国内作家 日影丈吉 03 19, 2006
- 日影丈吉『移行死体』(徳間文庫)
- きつい一週間を乗り切り、土日はぼーっと過ごす。嫁さんは実家へ帰省中、外は突風が吹き荒れ(天気はいいのに空は砂で真っ黄色という壮絶な天気)、おまけについFFXIIまで買ってしまったので、ほぼ引きこもって、ゲームやら読書やら。 読了本は日影丈吉の『移行死体』。 家賃滞納でアパートを放り出された大学生の宇部は、その先輩である画家の甘利のところに転がり込んだ。しかし甘利も家主の鳥山に立ち退きを迫られている身...
- Category: 国内作家 日影丈吉 09 07, 2005
- 日影丈吉『応家の人々』(徳間文庫)
- 日影丈吉『応家の人々』読了。言わずとしれた代表作だが、これが初読。飾ってある全集が泣きますな、これでは。 こんな話。台湾がまだ日本の植民地だった時代。久我中尉はある三角関係を巡る殺人事件の調査を命令される。それは単なる殺人の捜査ではなく、その裏に潜むやもしれぬ思想犯を追求するためだった。久我は三角関係の中心人物でもある未亡人、珊希に近づいて捜査を進めていくが、やがて珊希を取り巻く男が次々と死んで...
- Category: 国内作家 日影丈吉 03 13, 2005
- 日影丈吉『ふらんす料理への招待』(徳間文庫)
- 青梅は吉野梅郷に梅見物。我が家での毎年の恒例行事になってきたが、今年は初めて梅祭りに遭遇。っていうかこんなに盛大にやっていたとは知らなんだ。天候にはまずまず恵まれたが、かなりの寒さで早々に帰宅。あ、梅はもちろん見事でした。 日影丈吉の『ふらんす料理への招待』を読む。 著者の日影丈吉が作家になる以前、フランス料理のシェフたちにフランス語を教えていた話は有名だが、その絡みで氏もフランス料理への造詣が...