昨年刊行され、好評を博した児童向けミステリの
『ロンドン・アイの謎』だが、この度、その続編『グッゲンハイムの謎』が出たので読んでみた。
といっても著者は、シヴォーン・ダウドからロビン・スティーヴンスに代わっている。前作を読んだ方ならご存知のとおり、本国での『ロンドン・アイの謎』刊行後に著者が亡くなったからで、本作についてはタイトルと簡単な構想ぐらいしか残っていなかったという。それを受け継いだのがロビン・スティーヴンスで、わが国では『お嬢さま学校にはふさわしくない死体』などの作品で知られる作家である。
まずはストーリー。ロンドンで暮らす十二歳の少年テッドは、母と姉と一緒に、ニューヨークのグロリアおばさんを訪ねることになった。ところが皆でおばさんの働くグッゲンハイム美術館を見学中、火事騒ぎが発生。その最中に名画が盗まれ、なんと責任者のグロリアおばさんが逮捕されてしまう。
テッドは姉のカット、従兄弟のサリムと共に、おばさんの容疑を晴らすべく、真犯人を見つけ出そうとするが……。

前作『ロンドン・アイの謎』の大きな魅力は、子供向けながらしっかりした本格ミステリの結構を備えていたこと、そして発達障害を抱えながら優れた知能を持って活躍する少年をイキイキと描いていたことにある。
前者はともかくとして、後者はデリケートな要素をはらんでいるだけに、果たして別の作家が代作できるものだろうかという心配もあった。
ところが、それはまったくの杞憂に終わった。
注目すべきはやはりテッドのキャラクターである。発達障害を抱え、コミュニケーションや物事の空気を読むことは非常に苦手だが、事実を事実として受け止め、物事を正確かつ論理的に考えることに対しては非常に長けた少年だ。そんな少年の心情や周囲の人間との交流を一人称で描くというのは、なかなかのハードルではないか。
しかし、そのハードルをロビン・スティーヴンスは見事にクリアしてみせた。技術的に上手いなと思ったのは、前作で際立っていた部分、たとえばロジカルに事件の謎を解明していくこと、主人公のキャラクター、そして友人や家族との絆といった要素を、微妙ではあるが全体的により強めていたこと。やりすぎると逆にファンの反感を買うところだが、ここの匙加減が絶妙なのだ。
もちろん本来の原作者、シヴォーン・ダウドの前作があってこそではあるが、前作のテイストを壊すことなく、むしろそれ以上にシリーズとしての魅力に磨きをかけたように思える。
ちなみに今後の更なるシリーズ化は予定されていないようだが、主人公の特徴もあるので個人的にはその方針に賛成である。もしやるのであれば、主人公の成長や障害の部分もしっかりと見据えて、大事に育ててほしいものだ。