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 立て続けに濃いめの短篇ばかり読んでいるので、本日はもっとスマートな短篇集を手に取る。ヘンリイ・スレッサーの『夫と妻に捧げる犯罪』である。

 久々にスレッサーの短篇を読んだが、やはりオチの鮮やかさと洗練されたプロットは見事。長編もいくつか書いているが、やはりこの人の持ち味は圧倒的に短篇である。本書は日本でのオリジナル編纂によるものだが、解説によるとこれまでにまとめられた短篇集の落ち穂拾い的な性格もあるとのこと。それでもこの水準をキープしているのは流石としかいいようがない。
 強いていえばややコクに欠けるきらいもあるのだが、それを補って余りあるキレの良さ。たまに見せるハートウォーミングな物語も忘れがたく、「勲章のない警官」とかは思わずホロッとくる。未訳の作品がどの程度残っているのかは知らないが、それこそ論創社や河出の新シリーズなどで出してもらえないものだろうか。強く希望。

Lost Dog「愛犬」
The Absent Minded Professor(別題:The Absent Minded Murder)「うわの空の殺人」
The Lady and the Boy「就眠儀式」
Love Nest「愛の巣」
Light Fingers「光る指」
Marriages Are Made in Detroit「アンドロイドの恋人」
Fly Home to Betsy「ベッツィが待っている」
Cop Without Medals「勲章のない警官」
A Cry from the Penthouse「ペントハウスの悲鳴」
The Candidate「どなたをお望み?」
Incognito「人相書」
Mission: Murder!「暗殺司令」
The Wishgiver「三つの願いごと」
My Father, the Cat「猫の子」
The Traveling Couch「旅する医者」
The Anonymous Man「朝帰り」
Confession of a Talking Dog「置手紙」
The Toy「おもちゃ」
The Last Smile「最後の微笑」
A Way to Make It「出世の早道」
Very Rare Disease「奇病」
Solo for Violin「ヴァイオリン・ソロ」
The Firing Line「解雇通告」
The Secret Formula「すばらしい媚薬」
The Jam「交通地獄」
Examination Day「受験日」
Victory Parade「凱旋パレード」
After...「その後……」
A Whimper「遺言」
Good Morning! This Is the Future「おはよう、未来です」


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌


 本日の読了本はヘンリイ・スレッサー『グレイ・フラノの屍衣』。先日亡くなった短編の名手による長編第一作。有名な作品だが、恥ずかしながらずっと積読だった。

 ストーリーはこんな感じ。主人公は広告代理店に勤務する将来有望な青年。おりから一大キャンペーンをうっている食品会社の担当を任されることになる。しかし、そのキャンペーンにはどうやら不正があるらしい。青年はキャンペーンの担当として仕事を進めながらも、その裏を探ろうとする。しかし広告の元担当カメラマンが死亡したのを発端に、青年にも魔の手が迫る……。

 洗練された文章と味付け。広告業界を舞台にしていることもあって、ひとつひとつの場面はイキイキとした印象を受ける。会話は楽しいし、当時の広告業界の雰囲気もよくわかる。しかし残念ながらこちらの精神状態がイマイチなせいもあってなかなかノレない。ただ、すべて気持ちのせいかというと、あながちそうもいえないだろう。特に物語の序盤は全体に状況説明が乏しく、そのくせ登場人物が入れ替わり立ち替わり出てくるため、一見テンポはよさそうだが意外に読みにくいのである。
 また、軽みがこの作家の持ち味だが、それが長編になるとコクのなさばかりが目立ってしまうのもいただけない。例えは悪いかも知れないが、この感じはエドワード・D・ホックを読んだときの物足りなさとよく似ていると思う。
 そんなこんなで読後の印象は残念ながらいまひとつ。スレッサーの真価はやはり短編で発揮されると見た方がよいのだろう。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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