ロバート・ブロックの『予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖』を読む。ジョン・コリア、チャールズ・ボーモントに続く扶桑社ミステリー版異色作家短編集の第三弾である。
収録されているのは、初訳作品に加え、これまで我が国の雑誌やアンソロジーでしか収録されていなかった作品ということで、お得度もなかなか。でもそれって要は落ち穂拾い的な作品集なんじゃないのという不安も無用。内容的にもお得度は高い。

Method for Murder「殺人演技理論」
That Old Black Magic「奇術師」
The Cloak「マント」
The Plot Is the Thing「プロットが肝心」
Skeleton in My Closet「クローゼットに骸骨」
The Deadliest Art「殺人万華鏡」
Terror over Hollywood「ハリウッドの恐怖」
The Seal of the Satyr「牧神の護符」
Change of Heart「心変わり」
Floral Tribute「弔花」
I Kiss Your Shadow「影にあたえし唇は」
The Movie People「ムーヴィー・ピープル」
収録作は以上。上で書いたように十分満足出来る内容で、どれを読んでも安心して楽しめる。
もちろん今となっては古さを感じさせるものもあるし、単なるショックの度合いでは昨今のホラーに一歩譲るが、じわじわくる怖さ、ノスタルジックな雰囲気はブロックならではの味わいだろう。
何よりブロックの短編がいいのは、そこはかとなく漂うユーモアである。狙った笑いではなく、不気味な話であっても、全体的にユーモラスな雰囲気が練り込まれているイメージ。怖さとユーモアが溶け込むことで、独自の世界が構成されている。
お気に入りはけっこう多いが、まずは巻頭の「殺人演技理論」。ミステリ作家が、自作に登場する殺人鬼が現実に現れるという事態に直面し……というミステリ作品。
「奇術師」はどこかで読んだようなネタだが、これもブロックが走りなのだろうか。これもミステリの佳品。
「マント」は、仮装パーティ用に入手した古びたマントを羽織った主人公の運命を描く。盛り上げ方が秀逸。
「クローゼットに骸骨」はブロックお得意の精神医学ネタ、しかも倒叙ミステリ。個人的にはこれは怖いです。
「牧神の護符」は真っ向勝負のホラー。これに関してはユーモアの欠片もなく、ストレートにぐいぐい押していく。
「心変わり」はノスタルジーを押し出しつつもラストでぞっとさせる一品。この後味をいいと思うか悪いと思うか。
「影にあたえし唇は」は秀逸。事故で死んだはずの妻の「影」が枕元に現れたと告げる男の話だが、ホラーとミステリの融合としては非常に理想的な按配で、個人的にはこれが本書中のベスト。
ところで、この「予期せぬ結末」シリーズだが、残念ながら本書で中断している模様。この後、再開の目処が立っているのかどうか気になるところである(それともこれで完結?)。