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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 01 2003

G・K・チェスタトン『四人の申し分なき重罪人』(国書刊行会)

 無事、予定日に愛犬が出産。まずまず安産で一安心。チビ犬二匹とその世話をする母犬を見ていると感動しますなぁ。なーんにも子育てなど習ったことがないはずなのに、本能だけで一生懸命に子供の面倒を見る姿は立派なもんです。

 本日の読了本はG・K・チェスタトンの『四人の申し分なき重罪人』。
 本作は四つの作品を集めた連作中編集である。特ダネを追う新聞記者が、ロンドンで出会った四人の奇妙な男たちー<誤解された男のクラブ>の面々から聞いた不可思議な話のコレクション。すなわち「穏和な殺人者」「頼もしい藪医者」「不注意な泥棒」「忠義な反逆者」。ひねくれたタイトルからもわかるように、チェスタトンお得意の逆説が炸裂する。

 チェスタトンを読むのはずいぶん久しぶりで、『詩人と狂人たち』(それとも『ポンド氏の逆説』だったか)を五、六年前に読んで以来のはず。お馴染みのブラウン神父ものももちろん良いのだが、後期に書かれた『詩人と狂人たち』や『ポンド氏の逆説』は他のミステリにはない独特の満足感があって大変好みである。そして本書もそれらの作品と同じテイストを備え、かつ勝るとも劣らぬできばえの、実に満足できる一冊だった。
 ミステリを読んだときの満足感といってもいろいろあって、本格なら謎解きの楽しさやだまされる快感というのがまず挙げられる。ハードボイルドや冒険小説なら、ある種の感動や共感を得るために読むこともあるだろう。しかし今回読んだ『四人の申し分なき重罪人』はそれらのどのタイプとも異なる。ロジックを楽しむとでも言えばいいのだろうか、推理することが楽しいのではなく、考えることそのものを楽しむ小説なのである。日常からはみ出したある状況に対し、まったく異なるアングルから考察された論理は、読み手を知的興奮の迷宮に誘い込む。その逆説に隠されたテーマが明らかになる様は、ひとつの思想の具現化ですらある。
 古典の復刊ブームの今こそ、チェスタトンの絶版作品もぜひ復刊してほしい。そう願わずにはいられない。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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