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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 05 2004

ジム・トンプスン『深夜のベルボーイ』(扶桑社)

 デザイナーの募集を行うことになり、面接の日々が始まる。すっかり手慣れた仕事になってしまったので以前ほどの負担はないが、それでも精神的に疲れることは変わらない。応募者もこちらも真剣だものなぁ。

 読了本はジム・トンプスンの『深夜のベルボーイ』。
 主人公は、父の失職によって大学をあきらめ、ホテルのベルボーイをして暮らすダスティ青年。彼の冴えない小さな世界にすらさまざまな人間模様がある。失職後にだらしない生活を送り続ける父、ホテルの常連のギャングのボス、父をだましているのではないかとダスティが疑る弁護士、ホテルに現れた謎の美女、最近口うるさくなってきた同僚の男……。生きることに疲れ始めたダスティを、彼らは放っておいてはくれず、ダスティをさらに暗黒のただ中へ落とし込もうとする……。

 絶品。トンプスンはもう絶対外れなし。
 ワンパターンと言えなくもない。『アフター・ダーク』や『死ぬほどいい女』など、これまで翻訳されたものに比べれば地味なのも確か。しかし、犯罪者の末路をこれだけ鮮やかに見せてくれれば他に何を望むべきか? ちんけな男がちんけな犯罪に手を染め、泥沼にはまるという、ただそれだけの話をトンプスンは実に見事に活写する。どう転ぶか予測できないストーリー、生き生きと描かれた登場人物たち、皮肉なラスト。トンプスンを読まない人は絶対、損をしている。普段ミステリを読まない人にもオススメ。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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