レンタルで映画鑑賞。ものは劇作家ジェームズ・バリが未亡人シルヴィアやその子供たちと知り合って、名作『ピーター・パン』を書き上げるまでを描いた映画『ネバーランド』だ。バリ役はジョニー・デップで、『チャーリーとチョコレート工場』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』の、どちらかというとエキセントリックな役柄とは違い、こちらではしみじみとした渋めの演技が光る。未亡人家族との心の触れあいやピーター・パンのファンタジックな要素を巧みに取り込んで、なかなか感動的に仕上げたよい映画だ。
読了本は河出文庫のアンソロジーで『占いミステリー傑作選』。まずは収録作から。
高木彬光「家捜し」
阿刀田高「当たらぬも八卦」
星新一「夢と対策」
都筑道夫「腎臓プール」
小松左京「共喰い―ホロスコープ誘拐事件」
半村良「黙って座れば」
黒岩重吾「死の礼の女」
泡坂妻夫「ヨギ ガンジーの予言」
占いがミステリに最も効果的に使われるケースは(まったくの独断的意見だが)、予言ネタ以外にはまったくないと断言できる。そりゃそうだ。占いなんてものは似非統計学みたいなものであって、論理的に謎を解明するミステリと相性がいいわけがないのである。したがって、作中で絶対的事実としか思えない予言が、実はどのようにして人為的に為されたのか、そのネタを解き明かすことが興味深いのである。これはある意味、不可能犯罪ものにも通じるところではないだろうか。それ以外のパターンで占いを使っても、結局はミステリアスな雰囲気作りの効果しかなく、占いミステリとしては弱いと言わざるを得ない。まあ、「占いミステリの傑作」と褒められても、作者がどれほど嬉しいのかわからないけれど(笑)。
とまあ、そのような観点から本書を読むと、真っ向から予言ネタに挑戦している作品が意外に少なくて、少しがっかりした。該当するのは高木彬光の「家捜し」、泡坂妻夫の「ヨギ ガンジーの予言」あたりか。ただ、占いをテーマにした小説ということで読めば、さすがに豪華ラインナップだけあり、蘊蓄もそれなりにあるので、決して退屈することはない。時間つぶしにはちょうどよいかも。