fc2ブログ
探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 04 2006

デイヴィッド・ハンドラー『殺人小説家』(講談社文庫)

 デイヴィッド・ハンドラーの『殺人小説家』読了。
 元売れっ子作家にしてゴーストライターのホーギー。そんな彼のところへ1章分の小説と手紙が送られてきた。その出来の良さに驚いたホーギーだが、翌朝その小説に書かれたとおりに殺人事件が発生する。いったい誰が、何のために? 警察の捜査も開始されるが、それをあざ笑うかのように第二の殺人が起こり、小説の第2章も送られてくる。このときホーギーは、警察に話せないある事実に気がついていた……。

 まずは及第点といってよいだろう。シリーズのファンなら、ホーギーとルルやメリリーとのやりとりだけでも十分楽しめるし、やはりその点が一番の魅力だとは思う。だがハンドラーの偉いところは、それで満足することなく、ミステリーとしてもしっかりツボを押さえた作りを実現している点だ。本作でもパズラーに負けないぐらい伏線や手がかりを配し、きれいにオチを決めているのはさすが。傑作とまではいかないが、誰にでも安心しておすすめできる良心的な一冊である。
 ただ、本書を最後に本国ではシリーズが途絶えているらしく、それがなんとも残念だ。やや印象的なラストシーンではあるが、ここで打ち止めにするようなラストでもあるまい。しばらくは別シリーズで鋭気を養い、またホーギーの復活を願うばかりである(シリーズが復活した際は、トレーシーがけっこういい役回りで登場しそうな気がする。あくまで予想だが)。


« »

04 2006
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

ツリーカテゴリー