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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 07 2006

梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書)

 普段はベストセラーにしてもビジネス書にしてもあまり手にとることはないのだが、梅田望夫の『ウェブ進化論』はちょっと気になった一冊。

 まず前提としてあるのは、インターネットが登場して10年あまりたち、ここ数年のチープ革命によって、IT関連コストが劇的に低下していると言うこと。それによりネット人口が急増し、新たな技術の進化、富や権威、そして「知」の秩序までが再編成ししつつあるというのである。ウェブの世界がVer2.0に突入したと言われている現在、その変化にどう対処していくべきか、というのが本書の趣旨だ。

 基本的にはネットビジネス社会の現状をわかりやすく説明してくれているし、ちょっとお勉強するには良い本だと思うのだが、ここかしこに引っかかる部分もちらほら。
 例えばAmazonが成功したのは、今まで切り捨てていた小口のお客を相手にしたからだそうで、そういう客層を相手にできるのはWeb2.0社会ならでは、みたいな解説がある。しかし、「塵も積もれば……」式の小さいお客様を相手にする方法はこれまでもあったわけで。本でいうとそれこそブックオフなどもその一例だし、最近流行のアスクルもそのひとつだろう。出版物でも『ぴあ』とかその地域でしか役立たないものもある。むしろAmazonがここまで成功したのは売り方ではなく、注文した本がすぐに手元に届けることが可能になった流通形態の進化・工夫である。近年の宅配システムの進化、自社による巨大倉庫の確保がなければ、今のAmazonの成功はないのだ。そもそも店頭で見つからない少部数の本がAmazonで見つかったにせよ、配達に二~三週間もかかっては、書店で注文するのとまったく変わりない。Amazonにする理由はどこにあろう?
 他の例もあげよう。Googleの戦略としてあげられるメールやブログの記事から、自動的に広告を貼るシステムの説明があるが、これも個人的にはスパムと大差ないのではないか、と邪推してしまう。確か、昔のSF小説に電話に広告が入るってやつがあったが、あれも人間の神経を逆なでするものとして、その商業主義に警鐘を鳴らしたものだった。例えば、ある人間が友人の不幸についてお見舞いメールを送ったとき、そのメールのお尻に葬儀屋の広告が入ったらどんな気持ちがする?

 著者の主張のほとんどは理解できるし、納得もできるのだが、贔屓の引き倒しみたいな説明はもう少し潰してほしかったところだ。インターネットの力はみな既に実感しているし、さらなる段階への解説と対処では弱いと判断したのかな。


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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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