ロバート・B・パーカーの『突然の災禍』を読む。おなじみスペンサー・シリーズ。
スーザンの元夫ブラッドがセクハラで訴えられるという事件が起き、ブラッドはスーザンに助けを求めた。スーザンは複雑な思いを胸にしながらもスペンサーに調査を依頼するが、スペンサーがブラッドに会ってみると、スーザンの話と食い違うことが多く、当人は弁護士を雇おうともしない……。
前作『悪党』でスペンサーに試練を与えたパーカーだが、本作『突然の災禍』ではなんとスーザンに大いなる試練を与えたようだ。精神科医でありながら、元夫と現在の恋人の間で、自分の感情をうまく整理できないスーザン。それは過去の過ちをまたも繰り返しているのではないかという不安でもある。スペンサーはそんなスーザンの胸中を完全には理解できないでいるものの、……というのが今回の見所。二人のドラマが強すぎて、事件そのものは本当にどうでもいい状態である。ここまでいくと、もはやハードボイルドやミステリとしての評価は不可能に近いが、逆にシリーズをずっと読んできた人には見逃せない作品であることもまた確か。 おなじみホークとのやりとりや、懐かしのレイチェル・ウォレスらのシーンなど、楽しめる部分も多く、ファンなら必読といったところか。