Posted in 02 2010
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角田喜久雄『影丸極道帖(上)』(春陽文庫)
角田喜久雄の『影丸極道帖』を上巻まで読了。
探偵小説の書き手として知られる角田喜久雄のもうひとつの得意ジャンルが時代伝奇小説(むしろこっちの方が有名か)。本書はその代表作のひとつでもあり、本格風味もあるという一作。
江戸の街を恐怖に陥れる怪盗影丸。大商人や旗本の屋敷を襲っては略奪を繰り広げていたが、その影丸が遂に捕まった。お手柄は若手の敏腕同心、志賀三平の部下である岡っ引きの伝六。だが三平とその師匠格にあたる松平白亭は、おとなしく捕まった影丸に対し、一抹の不安を抱かずにはいられなかった。
案の定、影丸は脱獄に成功するが、時同じくして白亭の娘、小夜が誘拐されるという事件が起こる。下手人は忠臣蔵五段目、斧定九郎とうり二つの男。しかもこの男、岡っ引きの伝六と密約があるらしく……。

簡単にストーリーを紹介しようとしてもなかなか難しい。なんせ伝奇小説といえば、豊穣な物語性がなくてはならぬ一大要素。とてもじゃないが、ひとことで解説できるほどシンプルなストーリーではない。上で書いたのもほんのさわり程度で、上巻ではまだ敵味方も判然としないまま、運命に翻弄される小夜と彼女をつけ狙う悪党や影丸の暗躍が描かれる。もちろんそれを追う同心たちの活躍も見もので、総じてストーリーの面白さや登場人物たちの描写で読ませるといった印象。
ちなみに上巻を読む限りでは、本格風味を味わうというところまでには至っていない。同心たちが地道な聞き込み調査を行い、犯行の裏をとっていくという辺りはなかなか渋く、特に影丸の脱獄方法を突き止めるくだりなどは、他の時代物や伝奇物にあまり見られない警察小説的なシーンといえるだろう。
果たしてこの物語がどのような展開をみせてくれるのか。とりあえず下巻に突入。
探偵小説の書き手として知られる角田喜久雄のもうひとつの得意ジャンルが時代伝奇小説(むしろこっちの方が有名か)。本書はその代表作のひとつでもあり、本格風味もあるという一作。
江戸の街を恐怖に陥れる怪盗影丸。大商人や旗本の屋敷を襲っては略奪を繰り広げていたが、その影丸が遂に捕まった。お手柄は若手の敏腕同心、志賀三平の部下である岡っ引きの伝六。だが三平とその師匠格にあたる松平白亭は、おとなしく捕まった影丸に対し、一抹の不安を抱かずにはいられなかった。
案の定、影丸は脱獄に成功するが、時同じくして白亭の娘、小夜が誘拐されるという事件が起こる。下手人は忠臣蔵五段目、斧定九郎とうり二つの男。しかもこの男、岡っ引きの伝六と密約があるらしく……。

簡単にストーリーを紹介しようとしてもなかなか難しい。なんせ伝奇小説といえば、豊穣な物語性がなくてはならぬ一大要素。とてもじゃないが、ひとことで解説できるほどシンプルなストーリーではない。上で書いたのもほんのさわり程度で、上巻ではまだ敵味方も判然としないまま、運命に翻弄される小夜と彼女をつけ狙う悪党や影丸の暗躍が描かれる。もちろんそれを追う同心たちの活躍も見もので、総じてストーリーの面白さや登場人物たちの描写で読ませるといった印象。
ちなみに上巻を読む限りでは、本格風味を味わうというところまでには至っていない。同心たちが地道な聞き込み調査を行い、犯行の裏をとっていくという辺りはなかなか渋く、特に影丸の脱獄方法を突き止めるくだりなどは、他の時代物や伝奇物にあまり見られない警察小説的なシーンといえるだろう。
果たしてこの物語がどのような展開をみせてくれるのか。とりあえず下巻に突入。