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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 03 2010

『刑事コロンボ/権力の墓穴』

 昨日の「世界ふしぎ発見!」でシャーロック・ホームズ特集をやっていたが、元々あまり期待していなかったとはいえ、それにしてもしょぼかった。せっかくイギリスロケをやっているのに「これだけ?」という感じ。クイズもホームズと関係ないものばかりで、要はホームズではなくヴィクトリア王朝時代を紹介したかったのかなと。
 しかし、世界一有名な探偵、ホームズをもってしてもこの程度だから、海外ミステリに対する世間様の認識は推して知るべし、といったところか。
 そういえばもうすぐ映画も公開されるが、ヘタにマニアや関係者がしたり顔で「あれは意外と真のホームズ像に近いんだよ」なんて発言しないことを祈るばかり。知らない人は信じちゃうんだから。




 相変わらず週末の天気が悪く、積んであるDVDの消化。シリーズ第二十五作目にあたる『刑事コロンボ/権力の墓穴』を観る。
 犯人にコロンボの上司=警察本部の副部長を設定したことで、実にインパクトあるエピソードとして記憶される一作。犯行のきっかけが、隣人の偶発的な妻殺しによるものであり、そこから自分も妻殺しを思いつき、隣人にアリバイ工作をさせるというアイディアもいい。交換殺人ならず交換共犯というわけで、なかなか独創的だ。世評もけっこう高い作品である。
 演出もよくて、冒頭の部分――知人の犯行のアリバイ工作に奔走する犯人が、仕上げに警察に通報するシーン――は実に巧い。予備知識無しでみた場合、視聴者はここで初めて犯人が警察官であることを知るわけである。
 また、ラストのコロンボの仕掛けも実に鮮やか。あくまで演技を続ける犯人に対し、コロンボは執拗にひとつずつ説明を加え、そしてトドメのあれ。

 このように本作はオープニングとエンディングがビシッと決まっているので、トータルの印象はすこぶる良い。それが世評の高さに影響していると思われるが、実は弱点もそれなりにあって、しかもこれがスルーできるほど小さい問題ではない。
 一番の問題は、犯行時のアリバイ作りの杜撰さだろう。
 副本部長自らがヘリコプターから犯行を目撃するという点。ヘリコプターまで使ってパトロールを強化するというのに、その日に泥棒がわざわざ凶行に及び、そればかりかヘリの前に身をさらけだすという点。肺を調べられればプールで死んだか風呂で死んだかわかりそうなものなのに、そこまで気が回らない点。素人ならいざ知らず、これをキャリア警察官が考えた筋書きとするところに難がある。
 だから、犯人はコロンボの推理を論理的に潰すことが出来ず、ただ強引に窃盗犯の線に固執するのみ。あげくは地位を利用して、コロンボにまでそちらを担当させようとするから、余計に疑われる始末だ。これではコロンボの相手としてはいささか物足りない。結局、ラストでコロンボの仕掛けたワナにあっさりはまるわけだが、それも当然の結果だろう(苦笑)。

 結論。水準には達しているし見るべきところも多く楽しめるが、犯人がいまいち。もう少し頭脳派だったらより緊張感も増し、大傑作になっただろうに。惜しい。


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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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