
高木彬光の『乱歩・正史・風太郎』を読む。
題名どおり、江戸川乱歩や溝正史、山田風太郎との思い出や交友録が中心のエッセイ集である。編者・山前氏のまえがきによると、著者は書き下ろしでこれをやりたいのだと生前に語っていたらしいが、体調が優れず結局は叶わぬ夢となった。その夢をあらためて形にしたものが本書。
もちろんそういう事情なので、収録エッセイは発表済みのものばかりではあるが、個人全集の月報として書かれたものなど、今ではそうそう読めないものも収録されているので、やはり探偵小説ファンには貴重な一冊と言えるだろう。なんせ語る方も語られる方も日本探偵小説界屈指のビッグネーム。本書はそのままある時期の日本探偵小説史を語る内容にもなっているのだ。
著者は「一見、常識人だが、本質的には変人」と乱歩に評されたという。しかしながら本書を読むと、その語り口から浮かぶのはやはり真面目で誠実な人柄である。正反対の性格である山田風太郎とは、確かにいいコンビだったのだろう。
個人的にはここ数年、ほとんど高木彬光の作品は読んでいないのだが、これをきっかけにまた読んでみるのもいいなぁ。角川をコンプリートするという楽しみもできるし>結局、それがやりたいのか(笑)