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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

デヴィッド・グリーン『ギルティ・コンサイエンス』

 めとろんさんのブログ『めとLOG~ミステリー映画の世界 2nd season』でDVD発売を知り、すぐに購入したのが、今回ご紹介するTV映画の『ギルティ・コンサイエンス』。知る人ぞ知るバリバリのミステリドラマということだが、それもそのはずスタッフ・キャストが実に豪華。
 まず製作・脚本は刑事コロンボの生みの親、リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク。監督は、これまたミステリ映画の傑作として名高い『刑事マッカロイ 殺しのリハーサル』を演出したデビッド・グリーン。そして主演はあのアンソニー・ホプキンスときては、もう期待するなと言う方が無理だ。

 ギルティ・コンサイエンス

 弁護士のアーサーは愛人と結婚するため、妻の殺害を計画する。そこに現れたのが、アーサーのギルティ・コンサイエンス。ギルティ・コンサイエンスというのは簡単にいえば罪悪感。後ろめたい、疚しい、そんな気持ちである。そんな気持ちがもうひとりのアーサーとなって実体化し、犯罪を練るアーサーと激しく議論を展開する。途中からは妻や愛人までが加わって、どこからどこまでが事実なのかアーサーの脳内なのか判然としなくなり、ラストでアッと言わせるところはさすがにレヴィンソン&リンクのシナリオである。
 果たして完全犯罪は成立するや否や。ほぼその議論だけで展開するストーリーは、一幕物の舞台劇のようでもあり、独特の迫力と緊張感を生む。これがまたロジック命のようなミステリマニアの方々には堪らない味わい。

 ただ、お話はおそろしいほど地味だし(笑)、本格ミステリ的な興味がなければ辛いところはある。一般受けや痛快さという点では『刑事マッカロイ 殺しのリハーサル』が上だろうが、こういうものを映像化したというャレンジ精神は素晴らしい。犯罪計画の疑似体験という、実に濃密な90分間を過ごすことができる一作。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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