Posted in 04 2011
Posted
on
エルスペス・ハクスリー『サファリ殺人事件』(長崎出版)
長崎出版Gem Collectionから、エルスペス・ハクスリーの『サファリ殺人事件』を読む。原書は1938年の刊行。
著者のエルスペス・ハクスリーはこれが本邦初紹介となるイギリスの女流作家。幼い頃から植民地時代のケニアで過ごし、役人やジャーナリストの経験も豊富という人物である。ミステリはそれほど多く書いたわけではないが、アフリカでの体験が活きた作品を残し、本書もそうした一冊である。
舞台は東アフリカに位置する架空の英国植民地、チュニア。ヨーロッパの富豪たちがサファリ目当てにやってくる土地でもある。そんなチュニアの警察に勤めるヴェイチェル警視のもとへ、あるハンターが事件の相談に訪れた。サファリの上得意であるルーシー夫人の宝石が盗まれたのだという。ハンターを装って極秘に捜査を進めるヴェイチェルだったが、盗難事件はやがて夫人の殺人事件に発展する……。

アフリカを舞台にしたミステリというと、先日マシュー・ヘッドの『藪に棲む悪魔』を読んだばかり。だが、アフリカという舞台の活かし方、ミステリとしての完成度共に、本書の方が文句なしに上だ。
書かれた時代ゆえ現地人の描き方にはやはり問題があるけれど、アフリカの自然やサファリの描写は非常に詳しく、さすがに長年現地で暮らしてきただけのことはある。しかもミステリの一部として、これほど効果的にバッファローやサイなどをストーリーに組み込んだ例は記憶にない。まあ、そもそもバッファローやサイが出るミステリ自体がほとんどないんだけれど(笑)。
トリックや謎解きはさほど驚くほどのものではないが、丁寧なプロットや伏線、サファリという設定の活かし方、その独自性を考えれば、読み物としては十分オススメといえるだろう。
強いて難を挙げれば、主人公のヴェイチェル警視の個性ががいまひとつ。それなりに腕っ節も強く頭も切れそうなのだが、その割には後手に回ることが多く、詰めが甘い感じ。ま、この辺は好みもあるが。
なお、アラン・バーキンショー監督による映画『サファリ殺人事件』はまったく別物なので念のため(あちらは『そして誰もいなくなった』の映画化であります)。
著者のエルスペス・ハクスリーはこれが本邦初紹介となるイギリスの女流作家。幼い頃から植民地時代のケニアで過ごし、役人やジャーナリストの経験も豊富という人物である。ミステリはそれほど多く書いたわけではないが、アフリカでの体験が活きた作品を残し、本書もそうした一冊である。
舞台は東アフリカに位置する架空の英国植民地、チュニア。ヨーロッパの富豪たちがサファリ目当てにやってくる土地でもある。そんなチュニアの警察に勤めるヴェイチェル警視のもとへ、あるハンターが事件の相談に訪れた。サファリの上得意であるルーシー夫人の宝石が盗まれたのだという。ハンターを装って極秘に捜査を進めるヴェイチェルだったが、盗難事件はやがて夫人の殺人事件に発展する……。

アフリカを舞台にしたミステリというと、先日マシュー・ヘッドの『藪に棲む悪魔』を読んだばかり。だが、アフリカという舞台の活かし方、ミステリとしての完成度共に、本書の方が文句なしに上だ。
書かれた時代ゆえ現地人の描き方にはやはり問題があるけれど、アフリカの自然やサファリの描写は非常に詳しく、さすがに長年現地で暮らしてきただけのことはある。しかもミステリの一部として、これほど効果的にバッファローやサイなどをストーリーに組み込んだ例は記憶にない。まあ、そもそもバッファローやサイが出るミステリ自体がほとんどないんだけれど(笑)。
トリックや謎解きはさほど驚くほどのものではないが、丁寧なプロットや伏線、サファリという設定の活かし方、その独自性を考えれば、読み物としては十分オススメといえるだろう。
強いて難を挙げれば、主人公のヴェイチェル警視の個性ががいまひとつ。それなりに腕っ節も強く頭も切れそうなのだが、その割には後手に回ることが多く、詰めが甘い感じ。ま、この辺は好みもあるが。
なお、アラン・バーキンショー監督による映画『サファリ殺人事件』はまったく別物なので念のため(あちらは『そして誰もいなくなった』の映画化であります)。