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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 08 2011

ウィリアム・ブリテン『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』(論創海外ミステリ)

 ウィリアム・ブリテンの『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』を読む。
 著名なミステリ作家やその本を題材にしたパロディ短編集で、「~を読んだ~」として知られているシリーズ。過去には『ミステリマガジン』などでかなりの数が掲載されているのでご存じの方も多いだろう。ちなみに本国でもこのシリーズは一冊にまとめられておらず、なんと本書が世界初、というのが嬉しい。

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The Man Who Read John Dickson Carr「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」
The Man Who Read Ellery Queen「エラリー・クイーンを読んだ男」
The Woman Who Read Rex Stout「レックス・スタウトを読んだ女」
The Boy Who Read Agatha Christie「アガサ・クリスティを読んだ少年」
The Man Who Read Sir Arthur Conan Doyle「コナン・ドイルを読んだ男」
The Man Who Read G. K. Chesterton「G・K・チェスタトンを読んだ男」
The Man Who Read Dashiell Hammett「ダシール・ハメットを読んだ男」
The Man Who Read Georges Simenon「ジョルジュ・シムノンを読んだ男」
The Girl Who Read John Creasey「ジョン・クリーシーを読んだ少女」
The Men Who Read Isaac Asimov「アイザック・アシモフを読んだ男たち」
The Man Who Didn't Read「読まなかった男」
The Zaretski Chain「ザレツキーの鎖」
The Artificial Liar「うそつき」
The Platt Avenue Irregulars「プラット街イレギュラーズ」

 収録作は以上。タイトルだけでどんな作家が取りあげられているかわかるのが便利(笑)。
 ただ、「~を読んだ~」以外の作品は正式なシリーズではないけれど、関連性が高いということで収録されているらしい。すなわち「読まなかった男」はポオ、「うそつき」はディケンズ、「プラット街イレギュラーズ」はホームズをネタにしたもの。
 唯一、「ザレツキーの鎖」だけは(紛らわしいけれど)プリンス・ザレツキーのネタではなく、完全なノンシリーズである。まあ、シリーズとはいってもレギュラー探偵とかがいるわけでなし、それぞれ独立した作品なので、あまり気にもならないけど。

 収録されている作品のほとんどは本格系、いわゆるパズラーだが、味付け自体はいろいろと工夫されている、元々ミステリマニアの作家らしく、遊び心に富んだ内容である。ちょっと面白いと思ったのは、タイトルどおり登場人物たちが実際にその作家の本を読んで影響を受け、その作家の手法を真似て捜査や犯罪にあたるところ。単なるパロディに留まらず、モチーフとして作中で使っているのがミソか。正にミステリマニアが喜びそうな演出を仕掛けているのがいい。

 なお、上でパズラーとは書いたが、ロジックやトリックをそこまで求めたものではなく、全般的にはオチ優先の軽い読み物である。中にはホントにただのパズルみたいな話もあるし、そういう意味では少々食い足りないところもあるのだが、まあ楽しいことは楽しいので贅沢は言いますまい。
 お気に入りは表題作でもある「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」。なんとなく犯罪の失敗が臭わされているだけに、どんな失敗をするかが見どころ。こんな作品ばかりだと嫌になるが(苦笑)、やはり外すわけにはいかない。
 あとは、探偵とマジシャンの対決を描く「ザレツキーの鎖」。意外な話の転がり方がみそ。ラストが『ルパンIII世』っぽい。
 警備員の経験した奇妙な出来事から研究所の秘密漏洩をあばく「うそつき」もいい。出来でいうとこれがベストか。
 警察を信じていない市民たちが、自分たちで窃盗事件を解決する「プラット街イレギュラーズ」は、ほろりとさせる後味の良さがナイス。
 うん、やはり何かプラスαがある方が、個人的には読んでいて楽しめるな。


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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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