買ったときにTwitterでも少しつぶやいたのが森英俊・野村宏平/編著『少年少女 昭和ミステリ美術館』。戦前から戦後にかけて書かれた少年少女向けのミステリーを、装丁という観点で振り返ろうというヴィジュアルブック。本書に収められた書影は何とオールカラーで約400点に及ぶ。
B5判上製という造りのため、さすがに通勤に持ち歩いていくのも面倒なので、合間をぬってぼちぼち読んできた(眺めてきた)本である。

ミステリにはまる年齢やきっかけは人それぞれだと思うのだが、やはり小学生ぐらいで読んだ子ども向けの年探偵団やホームズ、ルパンがきっかけ、という人は多いのではないだろうか。
管理人も完全にその口で、たまたま近所に住む従兄弟が買ったポプラ社版ホームズを借りて読んだところ完全にはまり、それならってんで親にせがんで買ってもらったのがポプラ社版江戸川乱歩全集であった。ときを同じくして、また別の従兄弟はなんとポプラ社版ルパンを買ってもらい、三人ですべてを回し読んでいた記憶がある。まあ今思えばよくこんな素敵なコンボができたものだが、従兄弟同士にライバル心みたいなものがあったことは否めない。あいつがあれを買ってもらったのなら俺はこれ、みたいな感じですか(苦笑)。
そこからあとはもう手当たり次第。買ってもらったものもいくつかあるが、別にお金持ちでも何でもないので、やはりメインは学校図書館や私立図書館だった。中学校に入るあたりでいよいよ大人向け、つまり創元推理文庫に移行していくのだが、それまでの三年ほどでジュヴナイルはかなり読んだはずだ。
特に記憶に残っているのが、あかね書房の「少年少女世界推理文学全集」と講談社の「少年版江戸川乱歩選集」であった。前者はミステリファンの間ではけっこう定番みたいな存在になった感があるが、他の子ども向けにはあまり見られないハイソな(死語)造りに心惹かれたものだった。後者も子ども向けとは思えない造りだったが、その理由は全く異なり、生頼範義が描く函絵があまりにも怖かったことだった(これらも本書に収録されています)。
ま、そんな昔語りを思わずしたくなるほど、本書はノスタルジーをかき立ててくれる。今では入手困難なレア本なども多く収録されているし、そちらも確かにありがたいのだが、やはり自分が最もミステリを純粋に読んで楽しんでいた頃の本というのは最高の存在なのである。このときこうして本が好きになっていなかったら、少なくとも今の仕事はやってないものなぁ。
とうわけで管理人同様、年配のミステリファン(笑い)にはぜひともオススメしたい一冊。
詳しい中身については、管理人なんかが語るよりも、本を編集した藤原編集室さんのHP「
本棚の中の骸骨」に詳しいので
そちらをどうぞ。
なお、ひとつだけ注文をつけるとすれば、せっかく装丁や絵を軸にして「ミステリ美術館」という縛りで作られたのだから、エッセイについては、画家やイラストレーターへの説明や言及がもっと欲しかったところだ。少年少女向けのミステリーの変遷といった流れも確かに興味深いのだが、当時の画家さんについてはまとまった画集や資料などがない人も多く、非常に気になるのである。次はぜひそんなまとめでも作ってもらえると嬉しいです>藤原編集室さん