数年かけて観てきた東宝特撮映画DVDコレクションもいよいよ残り少なくなってきた。本日は『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』を視聴。通算二十五作目のゴジラ映画。公開は2001年、監督は平成ガメラ三部作をものにした、あの金子修介である。
1954年のゴジラ日本襲撃から半世紀あまり。グアム島沖で消息を絶ったアメリカの原潜を救助するため、日本の防衛軍は特殊潜航艇「さつま」を現場に向かわせる。だが、そこで「さつま」の乗務員が見たものは、原潜の残骸と、背びれを青白く光らせて移動する巨大生物であった。
巨大生物は果たしてゴジラなのか。防衛軍で協議が行われるなか、新潟県妙高山のトンネルでは暴走族が赤い怪獣に襲われ、鹿児島県池田湖では大学生たちが繭に包まれた遺体で発見されるという怪事件が続出していた。
BS局のレポーター立花由里は、知り合いの学者から情報を集め、事件の場所が『護国聖獣伝記』に記されている三体の聖獣、婆羅護吽(バラゴン)、最珠羅(モスラ)、魏怒羅(ギドラ)が眠る場所であることに気づく。事実を求めて由里は伝記の著者、伊佐山教授に会うが、伊佐山は「ゴジラは太平洋戦争で死亡した人々の怨念の集合体である」と語る……。

タイトルだけ見ると昭和ゴジラのような感じだが、中身はまったく異なる。これは平成に入ってから撮られたゴジラ映画では最も異色な作品であり、出来そのものも平成以降ではトップクラスのゴジラ映画であると思う。やはり監督でここまで映画は変わるのか。
そもそもミレニアム・シリーズは、昭和や平成の設定をリセットして、作品毎に新たな世界観を設けている。本作でも『ゴジラ』一作目の設定のみ生かし、その他の歴史はなかったことになっているが、とりわけ本作が奮っているのは、モスラやバラゴン、キングギドラを日本を護る聖獣として扱い、伝奇的に話を展開させていることだ。従来のインファント島やら宇宙怪獣やらという設定を忘れろというのは、古いファンにはいささか難しいところではあるのだが、その違和感を差し引いても、この物語世界は悪くない。
独自の設定はゴジラにも及び、上のストーリーでも書いたように、ゴジラは「太平洋戦争で死亡した人々の怨念の集合体」という解釈。管理人的には、自然災害、戦争、核の恐怖など、もはや人智を越えた負の存在のメタファーであればある程度は納得できるところなので、これもまたよし。ただ、ゴジラの出自が核兵器であったことを考えると、今回の「太平洋戦争で死亡した人々」の中にアメリカ兵も混ぜるのは、さすがにいかがなものかという気はする。
ストーリーラインだけではなく、映画の撮り方についても、怖い怪獣映画を意識しているのがよろしい。白目をむいたゴジラ、じわじわと盛り上げる恐怖やショッカー的演出も悪くない。特に前半は物語が伝奇風であり(天本英世の怪演もいい!)、ホラー映画的である。ゴジラ上陸以降も、宿や病院や学校での見せ方、なすすべなく死んでいく人々の描写など、印象的なシーンが多かった。
ただ、人間サイドのドラマがいまいちで、非常にもったいない感じは残る。そもそもドラマ以前の問題として、演技が全般的にひどすぎないか?
ぶっちゃけいうと怪獣映画に出演する役者のなかには、適当に演じているように思える人も少なくない。というか想像力がないんだろうね。子供が見るものだと思って、はなから過剰演技だったりメリハリが効き過ぎていたり。見ているこちらが恥ずかしくなることも多い。
だが今回はそういう話ではなく、単に下手に思えるケースが多くて困った。役者さんの罪というより、これは明らかなミスキャストであろう。
とはいえ今回ばかりはそういう部分に目をつぶり、トータルでは一応、成功作といっておきたい。
東宝特撮映画DVDコレクションも残り三作。ミステリ好きな方々にはスルーされまくりの記事だとは思うが、もう少しおつきあいください(笑)。