Posted in 11 2012
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横溝正史『消すな蝋燭』(出版芸術社)
横溝正史の『消すな蝋燭』を読む。出版芸術社の「横溝正史探偵小説コレクション」最終巻である。まずは収録作から。
「神楽太夫」
「靨」
「蝋の首」
「消すな蝋燭」
「泣虫小僧」
「空蝉処女」
「鴉」
「首・改訂増補版」

このシリーズは埋もれたレア作品を発掘しつつ、各巻ごとに何らかのテーマをもたせるという、非常に素晴らしいコレクションなのだが、今回は岡山を舞台にした作品でまとめられている。
そのテーマ自体はまあいいのだが、気になるのは、収録作が角川文庫で読めるものばかりだということ。唯一の例外は「首・改定増補版」なのだが、これにしても、つい二年ほど前に戎光祥出版から出た『横溝正史研究〈3〉』に収録されていたものなのである。
正直、解説を読んだかぎりでもその意図がはっきりしないのだが、要は『横溝正史研究〈3〉』に収録された「首」はけっこう編集段階でのミスが多かったようで、それを改めたものらしい。で、これに絡める形で岡山ものという括りでまとめたというところか。
まあ、間違いの訂正はやってくれた方がいいし、その他の短編も角川文庫に入っているとはいいながら、とっくの昔に絶版なので、出す意義は一応あるだろう。ただインパクトはこれまでに比べてずいぶん弱くなってしまったのが残念だ。
純粋に読み物としてみた場合、収録作自体の質は高い。
ほとんどが戦後間もない頃の作品で、正史がノリにノっている様子が作品を通じてビンビン伝わってくる。戦前作品に通じるロマンチズムと、本格として成立させるロジックの部分がきれいに融合し、しかも皮肉なオチを効かせた作品ばかり。
似たようなシチュエーションやら人物名を使ってしまうクセは相変わらずで、特に「鴉」と「首・改訂増補版」の冒頭のそっくり度合いはひどいものだが(笑)、まあ、こういう混乱振りを含めて楽しめる。
戦前作家は数々いれど、同時代の作家と比べると、やはり一枚も二枚も上を行っていた作家なのだなぁと再認識できる読書であった。
「神楽太夫」
「靨」
「蝋の首」
「消すな蝋燭」
「泣虫小僧」
「空蝉処女」
「鴉」
「首・改訂増補版」

このシリーズは埋もれたレア作品を発掘しつつ、各巻ごとに何らかのテーマをもたせるという、非常に素晴らしいコレクションなのだが、今回は岡山を舞台にした作品でまとめられている。
そのテーマ自体はまあいいのだが、気になるのは、収録作が角川文庫で読めるものばかりだということ。唯一の例外は「首・改定増補版」なのだが、これにしても、つい二年ほど前に戎光祥出版から出た『横溝正史研究〈3〉』に収録されていたものなのである。
正直、解説を読んだかぎりでもその意図がはっきりしないのだが、要は『横溝正史研究〈3〉』に収録された「首」はけっこう編集段階でのミスが多かったようで、それを改めたものらしい。で、これに絡める形で岡山ものという括りでまとめたというところか。
まあ、間違いの訂正はやってくれた方がいいし、その他の短編も角川文庫に入っているとはいいながら、とっくの昔に絶版なので、出す意義は一応あるだろう。ただインパクトはこれまでに比べてずいぶん弱くなってしまったのが残念だ。
純粋に読み物としてみた場合、収録作自体の質は高い。
ほとんどが戦後間もない頃の作品で、正史がノリにノっている様子が作品を通じてビンビン伝わってくる。戦前作品に通じるロマンチズムと、本格として成立させるロジックの部分がきれいに融合し、しかも皮肉なオチを効かせた作品ばかり。
似たようなシチュエーションやら人物名を使ってしまうクセは相変わらずで、特に「鴉」と「首・改訂増補版」の冒頭のそっくり度合いはひどいものだが(笑)、まあ、こういう混乱振りを含めて楽しめる。
戦前作家は数々いれど、同時代の作家と比べると、やはり一枚も二枚も上を行っていた作家なのだなぁと再認識できる読書であった。