本日は久々に西荻窪へ。盛林堂書房さんが昨年から始めたミステリアス文庫の最新巻『大阪圭吉作品集成』の受け取りである。先日の狩久全集と違って、実に手作り感溢れた小冊子という風貌の『大阪圭吉作品集成』だが、単行本未収録の作品ばかりだそうなのでこちらも読むのが楽しみである。
本日の読了本は『仁木悦子少年小説コレクション1 灰色の手帳』。山田風太郎に続く論創社の「少年小説コレクション」シリーズの一冊。まずは収録作。
「午後七時の怪事件」
「みどりの香炉」
「なぞの写真」
「ころちゃんのゆでたまご」
「七百まいの一円玉」
「消えたリュックサック」
「灰色の手帳」
「消えたおじさん」

仁木悦子が子供を主人公にしたミステリを数多く残していたのはよく知られているところ。以前には出版芸術社からそれらの作品をまとめた「子供たちの探偵簿」といったシリーズも出ている。ただ、「子供たちの探偵簿」は子供を扱っているけれど、あくまで大人向けの作品集。本書は仁木悦子が推理作家としてデビューする以前に書いていた、完全なジュニア向け小説集である。
したがって、さすがにひとつひとつの作品にミステリとしてどうこういうものはなく、仁木悦子ファンや当時のジュヴナイルに興味がある人だけ楽しめばよい。山田風太郎のときと同様、挿絵も豊富に収録されているのがよい。
収録作の多くは当時の学年誌に掲載されたものだ。当時の編集者からどのような注文があったかは不明だが、どの作品もミステリや冒険小説といって差し支えないものばかり。もう根っからのミステリ作家だったのだなぁと実感。
ちなみに本書にはエッセイの類も相当量、収録されている。著者のミステリ観がこうして読めるのはかなり珍しく、本書の目玉はむしろこちらにあるのかもしれない。