話題の夏休み映画がこぞって公開され始めたので、一番気になっていた『パシフィック・リム』を観る。監督はギレルモ・デル・トロ。
ときは近未来。太平洋のある海溝から巨大な生物が突如現れ、ロサンゼルスが襲われた。米軍が総力を挙げて戦った結果、なんとか倒すことには成功したが、それはこの先何年にもわたって続く悲劇の幕開けに過ぎなかった。巨大生物は一匹ではなく、その後も次々と出現し、世界各国の都市を襲撃し始めたのだ。
「カイジュウ」と名付けられた巨大生物を対すべく、人類の叡智が集結。そして開発されたのが二足歩行型の巨大ロボット兵器「イェーガー」だった。イェーガーは絶大な成果を上げたが、やがてカイジュウも進化適応し、人類は徐々に苦戦を強いられる。そしてイェーガー計画そのものが消滅したとき、司令官は政府から独立した組織として、最後の賭けに打って出ようとする……。

日本が世界に誇る二大コンテンツ、巨大ロボットと怪獣の戦いを真っ向から取り上げた大作。いろいろと引っかかる部分もあるにはあるが、まずはこれだけやってくれれば十分だろう。
監督のギレルモ・デル・トロはメキシコ人だが、メキシコでは数多くの日本製特撮映画やテレビアニメが放映されており、ギレルモは子どもの頃からそういったものでどっぷりと純粋培養され、生粋のオタクとして成長した方である。そんな彼が自分の思いを徹底的にぶちこんだのが本作。
したがって日本の特撮やアニメに対するリスペクトがここかしこに窺われ、一見はいかにも今どきのハリウッドSF大作だが、ギミックや演出は意外に懐かしい感じがするのがよろしい(もちろん日本の怪獣ファンにとってだが)。怪獣やロボットの動きに、いかにも日本的な決めポーズが入ったり(○○パーンチ!とか)、怪獣プロレスをシングルだけでなくタッグマッチでも見せたり、この監督の理解度は半端じゃない。
ロボットの操縦が二人のパイロットの脳をシンクロさせて行うというアイディアも悪くない。二人の記憶を同調させることが重要なので、パイロットは兄弟や親子という関係であればより相性が良くなるのだが、そこに絆を軸としたドラマも生まれるわけで、しかもこれがラストの科学者の活躍にもつながるという巧みさ。
ただ、正直描き方は浅く、ちょっともったいない気はするのだけれど、まあ、この映画のメインディッシュはそこじゃないから良しとする(笑)。
決着のつけ方がいかにも最近のハリウッドSF映画的で(このパターン多すぎるような)、そこは残念なところのひとつだが、まあ、そこも許す。
この手の映画を真面目に作ってくれるなら、管理人としてはそれだけで十分なのである。