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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

パトリック・マクグーハン『新・刑事コロンボ/完全犯罪の誤算』

 コツコツとDVDでコロンボを消化。シリーズ通算五十二作目の『新・刑事コロンボ/完全犯罪の誤算』は、旧シリーズでもおなじみのパトリック・マクグーハンが犯人役と監督を務める一作。

 弁護士のオスカー・フィンチは親友のマッキー下院議員のブレーンも務める多忙な男である。そんな彼のもとにステイプリンという男から電話が入った。ステイプリンはかつてフィンチに証拠隠滅をしてもらったおかげで逮捕を免れた過去があり、今回もフィンチに助けを求めてきたのだ。
 協力を断るフィンチを、過去の一件を持ち出して脅迫するステイプリン。しかしィンチはこんなこともあろうかと事前にアリバイ工作を行っており、その上でステイプリンを射殺し、自殺に偽装する。
 だが、実はステイプリンはフィンチと会う直前、旅先の妻にジョークをファクシミリで送っていたことが発覚。コロンボはこれから自殺する男がそんなことをするのは不自然だと考え、捜査を開始する。

 新・刑事コロンボ/完全犯罪の誤算

 新シリーズには珍しく、ケレン味のないオーソドックスな筋立てと演出が心地よく、新シリーズのなかでも上位に入る出来といえるだろう。これは旧シリーズでも監督や犯人役を数度務めたパトリック・マクグーハンの功績が大きいのではなかろうか。変な言い方だが、安心して見られる対決というか、犯人とコロンボががっぷり四つに組む意味(できればやや犯人有利)をマクグーハンはよく理解している。

 とはいえ最高傑作なのかというと、ミステリ的にはいくつか残念な点もちらほら。とりわけ決め手となるコロンボの一手は弱く、鮮やかなオチというにはちょっと物足りない。ただ、これはあくまで爽快感に欠けるという意味であり、コロンボの言っていることはもっともではあるんだけど。
 また、コロンボにその一手を打たせてしまった犯人のミスも気になる。あれだけ完璧にやって最後にそんなミスするかという不自然さ。用意周到で切れ者の犯人だけに、このボーンヘッドだけは流れから浮いてしまっている。

 ということで、いくつか残念なところもあるにはあるが、まあ、あまり厳しくは言いますまい。拳銃と血痕の関係性についての推理、マッキー下院議員へコロンボが詰め寄るシーン、犯人の犯行準備から犯行シーンまでの緊迫感など、見せ場もまた多い。
 何より旧シリーズのテイストを復活させてくれたことが嬉しい一作である。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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