『仁木悦子少年小説コレクション2 口笛探偵局』を読む。論創社の「少年小説コレクション」シリーズの一冊。まずは収録作。
「なぞの黒ん坊人形」
「やきいもの歌」
「そのとき10時の鐘が鳴った」
「影は死んでいた」
「盗まれたひな祭り」
「あした天気に」
「まよなかのお客さま」
「やさしい少女たち」
「雪のなかの光」
「緑色の自動車」
「消えたケーキ」
「口笛たんてい局」

仁木悦子の作品はそつがない。つぼを押さえているというか、読者の求めるところがちゃんと頭に入っており、それをきれいにまとめて上質の娯楽作品として提供する。インパクトの強烈さにやや欠けるところはあるが、総じてアベレージは高く、外れがほとんどないのが素晴らしい。何より読んでいて楽しいのである。
ジュヴナイルをまとめた本書でもそれは変わらない。子ども向けだからさすがに複雑なトリックやロジックなどはないけれど、手抜き感というものはまったく感じられず、むしろミステリのエッセンスが凝縮されている印象を受ける。
同シリーズの前作『灰色の手帳』では冒険色を押し出した作品が多かったけれど(低学年向けの作品が多かったせいか)、本書では謎解き要素の強い作品が多いので、よけいにそう感じるのかもしれない。
本書の目玉はやはり単行本初収録の長篇「口笛たんてい局」(なんで題名は平仮名なのに書名は漢字にしたのだろう?)か。小学四年生の仲良しグループで結成された「口笛たんてい局」の活躍を描いた連作形式の長篇で、お約束的な展開が目白押しだが、これも先ほど書いたように、きちんとつぼを押さえている証しである。ボリューム的にも読み応え十分。
ただし、本作はあくまで冒険がメインであり、探偵小説的には「なぞの黒ん坊人形」がイチ押しだろう。某有名作品と同様のトリックなのだが、不覚にも最後まで気がつかず、「そのネタか」と思わず唸ってしまった(笑)。
この「なぞの黒ん坊人形」をはじめとして、続く「やきいもの歌」「そのとき10時の鐘が鳴った」「影は死んでいた」あたりまでは真っ向勝負の探偵小説で、仁木悦子の底力を見る思いである。
いま読むと昭和の雰囲気も非常に懐かしく、マニアックなシリーズではあるのだけれど、本書に限っては万人におすすめできる一冊といえるだろう。