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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ルイス・ギルバート『007 ムーンレイカー』

 しばらく休み気味だった007視聴シリーズだったが、この三連休で久々に復活。ルイス・ギルバート監督による『007 ムーンレイカー』を観る。映画としては通算十一作目。1979年の作品。

 アメリカからイギリスへ輸送中のスペースシャトル「ムーンレイカー」が強奪されるという事件が起こる。英国諜報部はさっそく真相解明に乗り出し、ジェームズ・ボンドをシャトルの製造元であるカリフォルニアのドラックス社へ派遣した。ボンドはドラックス社のオーナー、ヒューゴ・ドラックスの屋敷でヴェニスのガラス工房で製造しているある製品の設計図を発見、さらに向かった先のヴェニスで殺人ガスの研究所に行き当たる。
 ガスの成分がアマゾンにしか生息しない植物のものだとわかり、ボンドはアマゾンへ向かうが、そこでヒューゴ・ドラックスの真の狙いを突きとめた……。

 007ムーンレイカー

 ロジャー・ムーア・ボンドといえばゴージャスさとお色気、ユーモアあたりが大きな特徴だけれど、それが前作『007 私を愛したスパイ』で成功したせいか、続く本作ではさらにパワーアップ。当時流行っていた『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』のパロディを取り入れ、あまつさえラストではとうとうボンドが宇宙へ繰り出してしまうというバカ映画になってしまった(笑)。
 実際、その荒唐無稽さによって駄作の烙印を押されている本作だが、久々に見直してみると、いやあ、こんだけバカやってくれれば、かえって清々しささえ感じてしまって、意外に楽しめるではないか。
 007シリーズはもともと大人のための紙芝居なんて言われ方もするのだが、それにしても本作は突っ込みどころが満載。悪ふざけが過ぎるところもあるのだが、実は英国はこういうお笑いに関してけっこう貪欲というか、むしろお国柄のようなところもあって、これが見事裏目に出たのが本作といえるだろう(笑)。

 しかしダニエル・クレイグの007しか知らない若い人が、本作を観たらどんな感想を持つのやら。まあ、こういう紆余曲折の果てに、今のシリアス007が出来ているのだから、これもまた立派な007の歴史の1ページなのだよなぁ。


プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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