初日は平日なので無理だったが、先週の日曜にはさっそく観てきました。ええ、もちろん『ゴジラ』です。

まだ経験の浅いギャレス・エドワーズ監督ということでやや不安もあったが、とりあえずは良くできた怪獣映画であった。前回のハリウッド版『GODZILLA』が犯した過ちをきちんと踏まえ、かつハリウッドならではのダイナミックな演出、そして最新の特撮技術をふんだんに盛り込んで、ちゃんと楽しめる映画になっている。
ストーリーと設定がリセットされ、完全にシリーズ一作目的な位置づけにしているのが気にはなるが、まあ、かつては東宝でも適当にリセットを繰り返していたから、あまり固いことは言うまい。世間では既に平成ガメラ的な文脈で語られはじめてはいるが、確かに今回のゴジラは荒ぶる神とでもいうようなイメージだ。
というのも相手怪獣のムートー(名前ダサッ)が世界を滅ぼしかねない存在であるのに対し、ゴジラは自然の均衡を保つ存在、というようなニュアンスで描かれているからである。平成ガメラのように地球を守護するバイオ兵器とまではいかないけれど、確かに本作のゴジラは人類の敵というわけではない。ムートーがいることで崩れそうになる自然界のバランスを保つため、本能的に倒そうとするだけである。とはいえゴジラは別に人類のことなど気にしていないわけで、ムートーを倒そうと暴れたあげく、結果的に人類にも多大なる被害をもたらしてしまう。破壊神という捉え方はいい線を突いているといえるだろう。
ただ、これをやりすぎると、結局は昭和末期の正義の味方のゴジラになってしまうのだが、何とか平成ゴジラあたりでとどまったところはひと安心。実はここが重要なポイントで、そうしないと怖いゴジラ、迫力あるゴジラはとても再現できないのである。
迫力あるゴジラということであれば、映像的にも合格点に達しているといえるだろう。ゴジラの大きさを感じさせる見せ方にこだわっているのは十分に伝わってきた。欲を言えば、もう少し新しい見せ方はほしかったところだ。特にゴジラとムートーの対決シーンは、従来のゴジラ映画で見たようなイメージばかりで、少々もの足りない。
平成ガメラが評価されたポイントも、まずは従来の怪獣映画にない視点だったことを考えると、ここはまだまだ研究してもらいたい部分である。
結局、ここが大人しかったことで本作は衝撃的な作品とまではいかず、あくまで予想範囲内の良作というレベルに留まっている。
最後にひとつ、実は本作でもっともまずい点を挙げておこう。
それは核兵器の扱いである。相変わらずハリウッド映画は核に対してこの程度の意識しか持っていないのかと思うと、本当にガッカリする。なぜ彼らは原爆や水爆を、単なる威力の大きい爆弾ぐらいにしか扱わないのか。
怪獣を倒すために核兵器を使うという決断が、笑っちゃうぐらいさっさと為されることに呆れるばかりである。ハリウッド映画ではこうしたシーンが実に多いのだけれど、アメリカに限らず、日本以外の国の核に対する意識や認識は本当にこんなものなのか。とはいえさすがに映画関係者がここまで正しい知識を持っていないとは思えない。要は核の恐怖を映画でオープンに出せない政治的事情やビジネス的事情が、かの業界にはあるのだろう。
個人的にはよくできた怪獣映画だと評価はしたい。しかしゴジラを扱うなら、そこは関係者に覚悟を決めて踏み込んでほしかったところだ。