Posted in 12 2014
Posted
on
藤村正太『女房を殺す法』(立風書房)
先日、論創ミステリ叢書から『藤村正太探偵小説選I』が出たが、これは乱歩賞を受賞する前の、川島郁夫名義時代の初期作品が中心だという。これまで管理人が読んだ著書はその乱歩賞受賞作『孤独なアスファルト』のみで、これは社会派っぽい作品、かたや『藤村正太探偵小説選I』は本格よりの作品が中心である。
で、本日の読了本『女房を殺す法』だが、こちらは売れっ子として活躍していた七十年代に刊行された短編集。その作風が上記のどちらとも違うことにまず驚いた。

「夜の死角」
「幻の肌」
「仮面の宴」
「唇の賭け」
「白い指」
「女房を殺す法」
「妻を深く眠らせる法」
収録作は以上。おそらく中間小説誌などに掲載されたものだろう。SMやフェティシズムなどエロティックな要素でたっぷり味つけしたサスペンス系が中心。主人公は一介のしがないサラリーマンが多く、彼らが鬱屈した日々の生活から逃れるために家族を裏切り、道を踏み外す様が描かれる。
正直、エロに寄りすぎで『孤独なアスファルト』とのギャップが大きく、軽いショック(苦笑)。まあ当時の読者や編集者のニーズを反映した結果なのだろうが、ポイントはそれらが単なるエロティックミステリに留まっていない点である。
例えば表題作の「女房を殺す法」は、自分の不甲斐なさを妻のせいにし、妻を殺して新たな道を歩もうとする男の転落の物語なのだが、着地点は普通の犯罪小説やサスペンスのそれではない。ストーリー半ばで自分以外に妻を殺そうとしているものがいるのではないかという疑惑が生まれ、ラストでは事件の意外な背景が明かされるという趣向だ。
また、「夜の死角」では脚フェチ男がひょんなことから新人歌手の援助をすることになる。ところが情事の真っ最中に歌手の元パトロンがやってきて、脚フェチ男はトイレに避難。その間になんと元パトロンが事故死してしまい……という展開。この事件でも実は背後にある企てが仕組まれており、その意外性が読みどころである。あ、もちろん濡れ場も読みどころではあるが(笑)。
どの作品も、こうした通俗的な設定のなかに、ミステリとしての結構をきっちり組み込んでいるのがミソ。
謎解きとしては偶然に頼るものがあったりしてガチガチの本格からは程遠いけれど、当時のニーズに合わせながらもミステリ作家としての矜持は貫いているぜ、みたいな心意気がうかがえ、意外に楽しめる一冊であった。
で、本日の読了本『女房を殺す法』だが、こちらは売れっ子として活躍していた七十年代に刊行された短編集。その作風が上記のどちらとも違うことにまず驚いた。

「夜の死角」
「幻の肌」
「仮面の宴」
「唇の賭け」
「白い指」
「女房を殺す法」
「妻を深く眠らせる法」
収録作は以上。おそらく中間小説誌などに掲載されたものだろう。SMやフェティシズムなどエロティックな要素でたっぷり味つけしたサスペンス系が中心。主人公は一介のしがないサラリーマンが多く、彼らが鬱屈した日々の生活から逃れるために家族を裏切り、道を踏み外す様が描かれる。
正直、エロに寄りすぎで『孤独なアスファルト』とのギャップが大きく、軽いショック(苦笑)。まあ当時の読者や編集者のニーズを反映した結果なのだろうが、ポイントはそれらが単なるエロティックミステリに留まっていない点である。
例えば表題作の「女房を殺す法」は、自分の不甲斐なさを妻のせいにし、妻を殺して新たな道を歩もうとする男の転落の物語なのだが、着地点は普通の犯罪小説やサスペンスのそれではない。ストーリー半ばで自分以外に妻を殺そうとしているものがいるのではないかという疑惑が生まれ、ラストでは事件の意外な背景が明かされるという趣向だ。
また、「夜の死角」では脚フェチ男がひょんなことから新人歌手の援助をすることになる。ところが情事の真っ最中に歌手の元パトロンがやってきて、脚フェチ男はトイレに避難。その間になんと元パトロンが事故死してしまい……という展開。この事件でも実は背後にある企てが仕組まれており、その意外性が読みどころである。あ、もちろん濡れ場も読みどころではあるが(笑)。
どの作品も、こうした通俗的な設定のなかに、ミステリとしての結構をきっちり組み込んでいるのがミソ。
謎解きとしては偶然に頼るものがあったりしてガチガチの本格からは程遠いけれど、当時のニーズに合わせながらもミステリ作家としての矜持は貫いているぜ、みたいな心意気がうかがえ、意外に楽しめる一冊であった。