マイクル・クライトンといえば『ジュラシック・パーク』等のハイテクスリラーで知られ、2008年に亡くなった世界的ベストセラー作家だ。死後に残されたパソコンから遺作『パイレーツ ー掠奪海域ー』が見つかり、日本でも2009年に刊行されたのを覚えている方も多いだろうが、その後、さらに見つかったのが本日の読了本『マイクロワールド』である。
ただし、ほぼ完成寸前で見つかった『パイレーツ ー掠奪海域ー』とは異なり、本作はまだ四分の一程度しか書かれておらず、これを一緒に見つかった資料等を使って、完成版としてまとめあげたのがリチャード・プレストンである。
リチャード・プレストンはエボラ熱の恐怖を描いた『ホット・ゾーン』などクライトンとも通じるような情報を駆使した作品を発表しているので、人選としては確かに悪くない。クライトンのアイディアをどこまで消化できたのか、そんなところにも興味をもちつつ読み始めた。

こんな話。ピーター・ジャンセンはマサチューセッツの大学で生物学を専攻する大学院生。六人の仲間とともに大学で先端研究に取り組んでいたが、ある日、大学へ兄エリックが現れ、自らの勤めるベンチャー企業Nanigenへのリクルートを勧められる。七名はさっそくハワイにある新薬開発の研究所を見学に訪れた。
そこでピーターたちが目にしたのは、物質を縮小させる革新的な装置テンソル・ジェネレーターだった。しかし、Nanigenの関わる犯罪に気づいたため、テンソル・ジェネレーターで身体を百分の一に縮められ、ハワイのジャングルに放り出されてしまう。アリやハチなど、小さな虫たちが巨大なモンスターとなり、脅威となるなか、七名はジャングルからの脱出を図るが……。
人間たちが縮むことによって新たな世界を見せるというのはアシモフの『ミクロの決死圏』を彷彿とさせるが、テイスト自体は自作の『ジュラシック・パーク』まんまといってよいだろう。院生たちが全員、昆虫や植物の専門家ということで、その知識を駆使してサバイバルに挑むというのはいかにもクライトンらしいスリラーである。
ただ、実際に書いたのがほぼプレストンだから、やはり違和感を感じるところはいくつかあるのだが、まあ詳しい感想は下巻読了時ということで。