ぼちぼち溜まってきた未視聴DVDを消化すべく、市川崑監督の『犬神家の一族』を視聴する。1976年公開のオリジナル版はもう何回か観ているので、今回は初見の2006年版。
ストーリーはさすがに今更という気もするが、一応書いておくと。
那須湖畔に本宅を構える信州財閥の大物、犬神佐兵衛が他界した。遺言状には遺産の相続について厳格な記述があったが、それは相続する権利を有する者すべてが揃わなければ公開されない決まりとなっていた。ほとんどの者はすでに犬神家本宅に集まり、残すは長女松子の息子、佐清の復員からの帰りを待つだけであった。
そんなとき金田一耕助は、犬神家の顧問弁護士を務める古舘恭三の事務所に勤務する若林から一通の手紙を受け取る。犬神家に容易ならざる事態が起こりそうなので、調査を依頼したいというのだ。しかし、訪れた金田一耕助の眼前で、若林は何者かによって毒殺されてしまう……。

1976年版と2006年版の違いについては、いろいろなところで語られているのでここでは言及しないが、個人的にはこの2006年版でもまずまず楽しめた。
ただ、1976年版と同じレベルで楽しめたかというと、さすがにそれは難しい。やはり1976年版はオリジナルという意味だけでなく、ミステリ的にもよくできている。言ってみれば2006年版は珠世と佐清のロマンス重視、1976年版はミステリ要素重視(謎解き+ホラー風味)という印象である。
特に横溝正史や金田一耕助、市川崑に対する思い入れがなければ2006年版でもなんら問題はないと思うが、最大の問題は、なぜ市川崑が新作の金田一ものにせず、あえてリテイク版を撮ったのかだろう。
2006年版はセットや1976年版との比較など、下手をすると1976年版以上に手間がかかったはず。巨匠の狙いなど理解できるところではないが、いちファンとしては単純に別の金田一ものを撮って欲しかったわけで、ただただもったいないと思うのみである。