この十日間ほどすっかり風邪にやられているのだが、薬で誤魔化しつつ普通に仕事もしているのでいっこうに治る気配がない。で、せっかくの休日もおとなしくしていればいいものを、つい西荻窪まで出かけてしまう。目的は盛林堂さんに予約してある本の受け取りなので、こればかりは仕方ない。いや、そうでもないか(苦笑)。
とりあえずブツは甲賀三郎の『浮ぶ魔島』と同人研究誌「新青年趣味」の十六号。特に後者は江戸川乱歩の未発表原稿を収録したということでなかなか評判になっているから、ご存知の方も多いだろう。
ただ、本日はそちらではなく、たまたま盛林堂さんの店頭で見かけて買うことができた『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド【増補改訂版】』を紹介したい。
先日開催されていた文学フリマ東京で発売されていたようで、その存在自体は知っていたが、現物を見るとこれがなかなか立派な造りで、内容もパッと見た感じでは悪くなさそう。ってんで即お持ち帰りである。
帰宅後、中身を少しあらためると、ううむ、これはなかなかの労作。タイトルどおり連城三紀彦の全著書ばかりか単行本未収録作なども網羅したガイドブックであり、エッセイや他の作家のために書いた解説なども追いかけているなど、徹底ぶりがお見事。また、実用度が高いだけでなく、連城の熱烈なファンだという著者のコラムなども熱の入り方が好ましく、これは立派なものである。
もちろん中には異論のあるものもあるけれど、それを言うのは野暮というもの。とりあえずは著者の苦労に拍手を送りたい。

本来、こういう仕事は作品を出している文芸系の版元がきちんとやっておくべきことなんだろうが、同時に商業ベースに乗にりくいことも理解はできる。だが、こうしてマニアやファンの方が頑張っているのを見ると、せめて大手の版元ぐらいはもっといろいろ仕掛けてほしいと思う次第である。