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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

アーサー・ロウ『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー 逃亡地帯を撃て』(ミカサ・ノベルズ)

 海外のテレビドラマというのはどこか独特の魅力がある。今でこそ衛星放送やらケーブルテレビ、インターネットやらで多くの番組が見られるようになったけれど、ほんの二、三十年前まではほぼ地上波に頼るしかなかったわけで、番組数も実に少なかった。それがまた職場や学校で共通の話題にもなり、だからこそものによっては社会現象にまでなったのだろう。
 管理人もご多分にもれず海外ドラマは嫌いではないのだが、最近はいかんせん連続ドラマを観るだけの時間がない。畢竟、好きなドラマはそれこそリアルタイムでテレビ放映を楽しんでいた昔のものになるのだが、個人的ベスト3を挙げるとすれば、刑事コロンボ、事件記者コルチャック、バイオニック・ジェミーあたりに落ち着くだろうか。あとはSHELOCK/シャーロックとかツインピークスとかも好み。

 で、上に挙げたような作品は本来、再放送やDVDで楽しむしかないのだが、その他の手段としてノヴェライゼーションという手もないではない。ただ、小説の映画化がほぼほぼ上手くいかないのと同様、映画やテレビの小説化というのもだいたいが厳しい(苦笑)。

 本日はそんな杞憂を抱えつつ、アーサー・ロウの『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー 逃亡地帯を撃て』を読む。
 ちなみに日本で放映されていたのが1977年頃。今ではバイオニック・ジェミーを知らない人も多いだろうし、念のために少し設定を記しておくと。
 基本はSFスパイドラマであり、もちろん徹底したエンターテインメント路線である。
 主人公は元プロテニスプレイヤーのジェミー・ソマーズ。スカイダイビング中の事故により瀕死の重傷を負うが、婚約者オースティン大佐が科学情報局に頼み込み、自分と同じバイオニック移植手術を施させる。その結果、彼女は一命を取り戻すと同時に両足、右腕、右耳がサイボーグ化された。
 だが、移植の拒絶反応からジェミーは記憶を失い、自分を救ってくれた科学情報局のために諜報活動に従事することになる……。

 地上最強の美女バイオニック・ジェミー 逃亡地帯を撃て

 本書は元になったドラマが二話分あり、それをつなげて一冊にしている。本国の放映順で言うと第57話『Rancho Outcast(ジェミー!犯罪ホテル潜入)』と第43話『Rodeo(ジェミー!ロデオ大会で大奮闘)』を合わせて『逃亡地帯を撃て』としているのである。
 おそらくこれは本にする際、単純に尺が足りなかったための策だろう。

 さてドラマの魅力はいろいろあるが、やはり何と言ってもジェミー・ソマーズのキャラクターが一番だろう。
 パッと見は正統派の美人ながら、快活で茶目っ気もあり、いざというときには常人離れした腕力や脚力で悪人を蹴散らす。しかも潜入捜査が多いせいか、毎回コスプレ状態となり、今、この記事を書いていて、これはもしかしたら萌え系ヒロインの走りではないかと思ったほどである。
 本作でも場末のバーの踊り子やカウボーイなど、きっちりファンの心を掴む展開になっているのはさすがである。

 ただ、正直、ノヴェライズで読むほどの内容ではない。アクションシーンやそれらしい演出がなどがあるからテレビ版はまだ楽しめるけれども、SFスパイドラマとしては非常に他愛ない。
 脚本から起こしているのか、あるいはテレビから直接起こしているのかは不明だが、とにかく映像を追っているだけの描写なので、まあ、なんともアッサリしたものである。ジェミーがサイボーグ化された体について葛藤するシーンもあるにはあるが、これも恐ろしく浅い。まあ、こんなものだろうとは予想していたけれど。
 一応、バイオニック・ジェミーのノヴェライズは全部揃えているはずだが、ううむ、これを読破するのはけっこう辛いぞ(笑)。
プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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