ジョン・ロードの『ラリーレースの惨劇』を読む。おなじみ論創海外ミステリからの一冊。
まずはストーリー。王位自動車クラブが主宰する英国ラリー大会。ロバートは友人のリチャード、さらにはナビゲーターとしてプリーストリー博士の秘書ハロルドとチームを組み、上位入賞を狙っていた。
ところが霧のせいでチェックポイント通過は大幅に遅れ、挙句に溝に脱輪したラリーカーを発見する三人。おまけにその事故現場では死体まで発見し、とうとうレースを中断する羽目になる。
しかし、厄介事はそれだけでは終わらなかった。当初はレース中の単純な事故と思われた一件だったが、不審な点が浮かび上がってきて……。

ジョン・ロードといえば英国の本格探偵小説を代表する一人ながら、作風の地味さや物語の単調なところが勝ちすぎて、日本では人気・評価ともいまひとつの作家である。
しかしながら本作はなんとカーラリーをネタにした作品。素材としてはなかなか派手なので、「もしかするとこれは今まで読んだものとは異なるかも」とは思っていたが、まあ、結論からするとそれほど大きな違いはなかった(苦笑)。
序盤こそラリーを舞台にしており動きもあるので、掴みとしては悪くない。ところが二十ページあまりで事件が発覚すると、あっという間にいつものロード、すなわち地道な捜査や推理の積み重ねに逆戻りである。トリックや犯人の意外性なども含め、甘くつけてもせいぜい六十点ぐらいであり、決して期待して読むような作品ではないだろう。
ただ、『ハーレー街の死』や『プレード街の殺人』などに比べると、多少は読ませる感じは受けた。その理由を聞かれても、実ははっきり答えるのが難しいのだが、強いて言えばストーリーのテンポの良さか。
いつものパターンだと推理による試行錯誤がストーリーの流れまで止めたり分断したりするところがあるのだが、本作では探偵役こそいつものプリーストリー博士ながら、実際に捜査を進めるのは警察のハンスリット警視や秘書のハロルド。彼らの捜査がまずまず良いテンポで、それを受けてのプリーストリー博士の推理という展開が、地味ながらストーリーに一定のリズムを作ったのではないだろうか。まあ、あくまで印象なので断言はできないけれど。
まあ、管理人などはクラシックなミステリであれば、とりあえず読んでみたいと考える人間なので、今後も質がどうあれロードの作品は読みたいのだが、ううむ、どこまで続けてくれるのやら。
なお、蛇足ながら本作の邦題にある「ラリーレース」という用語は気になる。確かに厳密にいうとラリ−はレースの一種なのだが、通常、モータースポーツではレースとラリーは別物である。
つまりサーキットで走行タイムを競うのがレース、一方のラリーは一般公道を用い、決められたタイムにしたがって走るというものである(これ以外にもラリーにはいろんな勝敗ルールがあるけれど)。
だから邦題をつけるならラリーとレースの並記は明らかにおかしい。邦題を活かすならそのまま『ラリーの惨劇』、語呂が悪ければ『カーラリーの惨劇』あたりだろう。まあ、個人的には「惨劇」というのも少々大げさな感じはするのだが。