久々に007シリーズをDVDで視聴。十七作目の『007 ゴールデンアイ』を観たのが昨年の8月だったから、ほぼ一年ぶり。ずいぶん間が空いてしまったが、ようやくゴールも見えてきたし、もう少しペースを上げねばなぁ。
さて、シリーズ十八作目は『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』。ボンド役は五代目のピアース・ブロスナン、監督はロジャー・スポティスウッドという布陣。スポティスウッド監督は日本での知名度はいまひとつだが、パトリシア・ハイスミスの『贋作』を映画化した『リプリー 暴かれた贋作』なども撮っている人である。
まずはストーリー。
英国諜報部のMI6はロシアと共同で、ロシア国境沿いにある武器市場を調査していた。現地に潜入したジェームズ・ボンドは世界中の危険人物がいることを確かめ、MI6は直ちにミサイル攻撃を行う。しかし、このときアメリカ人テロリストのヘンリー・グプタを逃してしまう。
後日、南シナ海で英国海軍のフリゲート艦と中国空軍のミグ戦闘機が公海上で交戦するという事態が起こる。一触即発ともいえる状況のなか、その事件をいち早く伝えたメディアがあった。イギリスのメディア王・エリオット・カーヴァーが発行する新聞「トゥモロー」である。この事実に着目した英国諜報部のMはボンドをカーヴァーの主催するパーティーに派遣させる……。

前作『007 ゴールデンアイ』からピアース・ブロスナンをボンドに据え、大幅リニューアルを図った007シリーズだが、本作でもメディア王という存在を敵に据えたり、バイクやヘリによるスタントなど、現代的なスパイアクションを見せたいという意志は強く感じる。
まあ、現代的とはいっても1997年の作品なので、インターネットがまだまだ一般的ではない時代。新聞や雑誌、テレビを支配することで世界も支配しようというのは、今観るとさすがに無理がある。ただ、一昔前までは確かに世論はテレビや新聞によって形成されていたわけで、情報操作することの危険や影響力といった本質的なところは、今の時代とそれほど外れているわけではないだろう。
気になったのは敵のボス、メディア王・カーヴァーの存在。まるでスティーブ・ジョブズとかビル・ゲイツを連想させるようなキャラクターである。根っからの犯罪者ではなく、こういうある種の子供っぽさを備えた、言い換えると成熟していないゆえの危険性を孕んだ敵、さらに言い換えると要は大富豪のオタクというのが、なかなか目新しい。
ただ、いろいろな策略や技術は打ち出すのだが、強さや怖さがまったく感じられないのは致命的であろう。チャレンジとしてはわかるが、結果的にはやはり失敗だろうな(苦笑)。
他にもカンフー使いの中国人女スパイ、バイクのスタント・シーン、携帯で操縦するボンド・カーなど、新要素とまではいかないものの随所にパワーアップした見所はあるので、120分は比較的あっという間である。
強いて言えば終盤の盛り上がりがいまひとつで、これも結局は敵の弱さに大きな原因があるため、ここがもう一工夫あれば、それなりの傑作になったのではないだろうか。
まあ新味には欠けるけれども、トータルではバランス良く仕上がっていることもあり、個人的には65点ぐらいは差し上げたい。