Posted in 12 2016
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ミステリベストテン比較2017年度版
『このミス』を読んでいて、そういえば昨年は各誌ベストテンのランキング比較をやったなぁと思い出し、今年もやってみることにした。
ここ数年似たようなベストテンが続いているなか、各誌の傾向は実際どうなのよというのがポイント。ざっと本を眺めたかぎりでは、熊とメルセデス、カミーユが強そうな印象ではあるが、平均を出すとどういう結果になるのか。また、票が散らばりやすい下位も気になるところである。
ルールは昨年同様で、『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」、『週刊文春』の「ミステリベスト10」、宝島社の『このミステリがすごい!』の各ランキング20位までを対象に平均順位を出すという、いたってシンプルなもの。ランキングによって対象となる刊行期間が異なるため(ミステリマガジンのみ10月1日から9月31日、他は11月1日から10月30日)、1つしかランクインしていないものは省き、2つのランキングにランクインしているもののみ取り上げている。
ただ、1つしかランクインしていないものでも、それがむしろランキングの個性ということにもなるので、今年は一応参考資料としてそちらも並べてみた。

で、結果はごらんのとおり。
案の定『熊と踊れ』と『ミスター・メルセデス』がワンツーフィニッシュ。これに続くのが『ザ・カルテル』、『傷だらけのカミーユ』『拾った女』ということで、どのベストテンも上位はほぼ同じ顔ぶれ。とりたてて驚くこともない、実に面白みのない結果となってしまった。
ただ、各誌の上位比較では面白くないけれど、キングやウィンズロウ、ルメートルといった常連をおさえて『熊と踊れ』が一位というのは悪くない。やはり新しい人が出ないと活気も出ない。
また、『熊と踊れ』の作者がぽっと出の新人ではなく、すでに邦訳のある作家というのもいい(共作者の一人、アンデシュ・ルースルンド)。ルメートルもそういえばブレイクする前に邦訳はあったのだが、かつてセールス的にパッとしなかった作家を再度売り出そうという版元のチャレンジャー精神は買いたい。
あと、個人的には『拾った女』がけっこう評価されているのが嬉しい。『このミス』ならそこそこ上位にいくとは思っていたが、まさかの全誌ランクインである。
ちょっと不運なのは『傷だらけのカミーユ』で、これは『ミステリマガジン』が対象期間もれとなってしまったことがモロに影響している。「ミステリが読みたい!」で順当に三位以内ぐらいをキープしていれば、もう少し上位に入ったはずだ。
いや、むしろ問題なのは『悲しみのイレーヌ』が本年度のほうにランクインしていることかもしれない。それこそ一年以上前の本になるので、これを今さら今年のベストテンに入れることがピンとこない。これは『スキン・コレクター』も同様で、ランキングには直近の作品がどうしても有利になるので、やはりミステリマガジンには足並みをそろえてほしいところである。
一方、下位に目をやると、こちらは思った以上に各誌のクセが出てきて面白い。
まず「ミステリが読みたい!」だが、下位というほどではないが『宇宙探偵マグナス・リドルフ』が圏外なのは意外だった。なんとなくSF的なものや哲学的なものは「ミステリが読みたい!」こそ強いイメージがあったのだが。そのくせ『虚構の男』は「ミステリが読みたい!」のみランクインだし、『プラハの墓地』はきっちり十位に入っているしで、ううむ、よくわからん。
ちなみに今年は『熊と踊れ』が盤石の一位をとっているせいか露骨な自社本推しは感じられない。まあ、それでも他のベストテンよりは自社本が多いけれど(苦笑)。
文春の「ミステリベスト10」はこの点、わかりやすい。今も昔も話題作、有名作家のものが基本強い。ラインナップを見ても、いかにも文春ベストテンという感じである。
シーラッハの『テロ』などは今回、ベストテンに入れることがそもそもどうなんだという内容なのだが、それでもしっかり十四位に食い込んでくるあたり、さすがである(苦笑)。唯一、『宇宙探偵マグナス・リドルフ』だけが突然変異的なランクインで楽しい。
『このミス』はこうして見ると、ジャンル的にはやはり一番幅広いかなという印象。上位の顔ぶれが当たり前すぎて残念だが、一誌のみランクインの方ではSFっぽいものや本格クラシック、ユーモアものなど、一般受けはしなくともその道のファンには喜ばれている作品がちゃんと選ばれているのがいい。うむ、少し見直したぞ(苦笑)。
ということで、近年感じていたどこも似たり寄ったりのランキングというイメージは若干修正されたが、それでも上位を見るかぎりはまだまだ。来年はさてどうなりますか。
ここ数年似たようなベストテンが続いているなか、各誌の傾向は実際どうなのよというのがポイント。ざっと本を眺めたかぎりでは、熊とメルセデス、カミーユが強そうな印象ではあるが、平均を出すとどういう結果になるのか。また、票が散らばりやすい下位も気になるところである。
ルールは昨年同様で、『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」、『週刊文春』の「ミステリベスト10」、宝島社の『このミステリがすごい!』の各ランキング20位までを対象に平均順位を出すという、いたってシンプルなもの。ランキングによって対象となる刊行期間が異なるため(ミステリマガジンのみ10月1日から9月31日、他は11月1日から10月30日)、1つしかランクインしていないものは省き、2つのランキングにランクインしているもののみ取り上げている。
ただ、1つしかランクインしていないものでも、それがむしろランキングの個性ということにもなるので、今年は一応参考資料としてそちらも並べてみた。

で、結果はごらんのとおり。
案の定『熊と踊れ』と『ミスター・メルセデス』がワンツーフィニッシュ。これに続くのが『ザ・カルテル』、『傷だらけのカミーユ』『拾った女』ということで、どのベストテンも上位はほぼ同じ顔ぶれ。とりたてて驚くこともない、実に面白みのない結果となってしまった。
ただ、各誌の上位比較では面白くないけれど、キングやウィンズロウ、ルメートルといった常連をおさえて『熊と踊れ』が一位というのは悪くない。やはり新しい人が出ないと活気も出ない。
また、『熊と踊れ』の作者がぽっと出の新人ではなく、すでに邦訳のある作家というのもいい(共作者の一人、アンデシュ・ルースルンド)。ルメートルもそういえばブレイクする前に邦訳はあったのだが、かつてセールス的にパッとしなかった作家を再度売り出そうという版元のチャレンジャー精神は買いたい。
あと、個人的には『拾った女』がけっこう評価されているのが嬉しい。『このミス』ならそこそこ上位にいくとは思っていたが、まさかの全誌ランクインである。
ちょっと不運なのは『傷だらけのカミーユ』で、これは『ミステリマガジン』が対象期間もれとなってしまったことがモロに影響している。「ミステリが読みたい!」で順当に三位以内ぐらいをキープしていれば、もう少し上位に入ったはずだ。
いや、むしろ問題なのは『悲しみのイレーヌ』が本年度のほうにランクインしていることかもしれない。それこそ一年以上前の本になるので、これを今さら今年のベストテンに入れることがピンとこない。これは『スキン・コレクター』も同様で、ランキングには直近の作品がどうしても有利になるので、やはりミステリマガジンには足並みをそろえてほしいところである。
一方、下位に目をやると、こちらは思った以上に各誌のクセが出てきて面白い。
まず「ミステリが読みたい!」だが、下位というほどではないが『宇宙探偵マグナス・リドルフ』が圏外なのは意外だった。なんとなくSF的なものや哲学的なものは「ミステリが読みたい!」こそ強いイメージがあったのだが。そのくせ『虚構の男』は「ミステリが読みたい!」のみランクインだし、『プラハの墓地』はきっちり十位に入っているしで、ううむ、よくわからん。
ちなみに今年は『熊と踊れ』が盤石の一位をとっているせいか露骨な自社本推しは感じられない。まあ、それでも他のベストテンよりは自社本が多いけれど(苦笑)。
文春の「ミステリベスト10」はこの点、わかりやすい。今も昔も話題作、有名作家のものが基本強い。ラインナップを見ても、いかにも文春ベストテンという感じである。
シーラッハの『テロ』などは今回、ベストテンに入れることがそもそもどうなんだという内容なのだが、それでもしっかり十四位に食い込んでくるあたり、さすがである(苦笑)。唯一、『宇宙探偵マグナス・リドルフ』だけが突然変異的なランクインで楽しい。
『このミス』はこうして見ると、ジャンル的にはやはり一番幅広いかなという印象。上位の顔ぶれが当たり前すぎて残念だが、一誌のみランクインの方ではSFっぽいものや本格クラシック、ユーモアものなど、一般受けはしなくともその道のファンには喜ばれている作品がちゃんと選ばれているのがいい。うむ、少し見直したぞ(苦笑)。
ということで、近年感じていたどこも似たり寄ったりのランキングというイメージは若干修正されたが、それでも上位を見るかぎりはまだまだ。来年はさてどうなりますか。