Posted in 12 2016
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ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』(文春文庫)
ピエール・ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を読む。『悲しみのイレーヌ』、『その女アレックス』に続くカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの三作目だが、実はこれ三部作だったらしく(日本での刊行は二作目の『〜アレックス』が先になったけれど)、本作がその完結編。
で、最初にまず書いておきたいのは、これからこのシリーズを読もうと思っている人は、必ず本国での刊行順どおりに読んでほしいということ。単純にストーリーがつながっていることもあるのだが、本作だけ最初に読んでも、その感動や衝撃はケタ違いである。イレーヌ→アレックス→カミーユ、必ずこの順番でよろしく。
そして『〜イレーヌ』がもし精神的にきついなと思っても、ぜひ『〜アレックス』、『〜カミーユ』までお付き合いしてもらいたい。本シリーズは三作すべてを読むことで、さらに相乗効果が何倍にもなる作品なのである。
ということで、これだけプッシュしておけばすでにおわかりかとは思うが、本作も文句なしの傑作。これまでの二作でミステリという枠そのものを巧妙に仕掛けとしてきた感のあるルメートルだが、本作はまたひと違う趣向で攻めてきた。
まずはストーリー。
愛妻イレーヌの死から数年が経過し、アレックスの事件でようやく重要事件の現場に復帰したカミーユ警部。今ではアンヌという恋人もでき、イレーヌのショックからなんとか立ち直りつつあった。しかし、今度はそのアンヌが銀行強盗事件に巻き込まれ、瀕死の重傷を負う。一命をとりとめたのも束の間、犯人はなぜかアンヌを執拗に狙ってきた。二度と愛する人を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠して事件を担当し、アンヌを守ろうとするが……。

ルメートルの作品の優れたところは、警察小説としても十分すぎる出来なのに、プラス強烈なトリックを仕込んでくるところである。
主人公の刑事自らが事件の関係者となり、その葛藤の中で捜査する羽目になるという構図は近年の警察小説の定番ではあるけれど、ルメートルのそれはまちがいなく一級品。丹念にカミーユの心情を描き、その人間臭さがぷんぷん匂うし、そのチームや上司との交流の描写も実に心憎い。
だが、それだけではここまでのビッグヒットにはならなかったはずで、そういう王道の物語で完結させず、読者をあっといわせるサービス精神もそれ以上にあるところが素晴らしい。
上で“ひと違う趣向”と書いたが、まあ、例によって詳しくは話せないネタなので、これは実際に読んでもらうしかない。管理人も本作では二度ほど驚かされ、前のページを思わず読み返してしまったほどだ。
さすがに破壊力では『〜アレックス』に一歩譲るが、カミーユ自身の物語という点ではこちらが上。十分にオススメできる逸品である。
なお、カミーユを主人公にした作品は他にも『Les Grands Moyens』と『Rosy et John』があるのだが、どうやらそちらは中編らしく、いわゆるナンバリングタイトルではないようだ。解説では「ぜひ中編集として出して」と書かれていたが、管理人もそれに一票。
で、最初にまず書いておきたいのは、これからこのシリーズを読もうと思っている人は、必ず本国での刊行順どおりに読んでほしいということ。単純にストーリーがつながっていることもあるのだが、本作だけ最初に読んでも、その感動や衝撃はケタ違いである。イレーヌ→アレックス→カミーユ、必ずこの順番でよろしく。
そして『〜イレーヌ』がもし精神的にきついなと思っても、ぜひ『〜アレックス』、『〜カミーユ』までお付き合いしてもらいたい。本シリーズは三作すべてを読むことで、さらに相乗効果が何倍にもなる作品なのである。
ということで、これだけプッシュしておけばすでにおわかりかとは思うが、本作も文句なしの傑作。これまでの二作でミステリという枠そのものを巧妙に仕掛けとしてきた感のあるルメートルだが、本作はまたひと違う趣向で攻めてきた。
まずはストーリー。
愛妻イレーヌの死から数年が経過し、アレックスの事件でようやく重要事件の現場に復帰したカミーユ警部。今ではアンヌという恋人もでき、イレーヌのショックからなんとか立ち直りつつあった。しかし、今度はそのアンヌが銀行強盗事件に巻き込まれ、瀕死の重傷を負う。一命をとりとめたのも束の間、犯人はなぜかアンヌを執拗に狙ってきた。二度と愛する人を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠して事件を担当し、アンヌを守ろうとするが……。

ルメートルの作品の優れたところは、警察小説としても十分すぎる出来なのに、プラス強烈なトリックを仕込んでくるところである。
主人公の刑事自らが事件の関係者となり、その葛藤の中で捜査する羽目になるという構図は近年の警察小説の定番ではあるけれど、ルメートルのそれはまちがいなく一級品。丹念にカミーユの心情を描き、その人間臭さがぷんぷん匂うし、そのチームや上司との交流の描写も実に心憎い。
だが、それだけではここまでのビッグヒットにはならなかったはずで、そういう王道の物語で完結させず、読者をあっといわせるサービス精神もそれ以上にあるところが素晴らしい。
上で“ひと違う趣向”と書いたが、まあ、例によって詳しくは話せないネタなので、これは実際に読んでもらうしかない。管理人も本作では二度ほど驚かされ、前のページを思わず読み返してしまったほどだ。
さすがに破壊力では『〜アレックス』に一歩譲るが、カミーユ自身の物語という点ではこちらが上。十分にオススメできる逸品である。
なお、カミーユを主人公にした作品は他にも『Les Grands Moyens』と『Rosy et John』があるのだが、どうやらそちらは中編らしく、いわゆるナンバリングタイトルではないようだ。解説では「ぜひ中編集として出して」と書かれていたが、管理人もそれに一票。