Posted in 02 2017
DVDで『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』 を視聴。第二次世界大戦中にドイツ軍のエニグマ暗号の解読に取り組み、のちに同性間性行為の罪で罰せられ、最後は自害したイギリスの暗号解読者アラン・チューリング。その悲運の生涯を描いた歴史スリラーである。
日本では2015年公開。監督はモルテン・ティルドゥム、主演は傲慢な天才役をやらせたらピカイチの(笑)ベネディクト・カンバーバッチ。
ときは1939年。イギリスがドイツに宣戦布告した年のこと。数学者アラン・チューリングは政府暗号学校が置かれるブレッチリー・パークを訪れ、デニストン中佐の指揮の下、数名の仲間とチームを組み、ナチスの暗号機エニグマの解読に挑むことになる。
朝から晩まで暗号の解読に励むメンバーたち。だがチューリングだけはひとり暗号解読装置の設計に没頭していたため、両者の間には溝が深まってゆく。だが後から加わったクラークがチューリングとメンバーの中をとりもつことで、チームは徐々に結束、ついに装置は完成した。
だがドイツ軍は暗号のパターンを毎日変えるため、装置の処理が追いつかない。業を煮やしたデニストンは装置の破棄とチューリングの解雇を命じる。仲間の協力でこれを回避したチームだったが、問題はそれだけではなかった。両親から仕事を辞めろと迫られるクラーク、チームにかけられるスパイ容疑、そしてチューリング自身に隠された秘密などなど。
そんななか、チューリングは通信を傍受する役目の女性職員の話から、ついに暗号解読のヒントを思いつく……。

ううむ、まずまず楽しめたけれど、チューリングの天才っぷりや暗号解読についての見せ場がそれほどではないのが残念。
確かにチューリングという人物に注目した場合、数学者としての偉業もさることながら、その不遇な生涯に目を奪われる。自己中心的な性格や性的嗜好が災いしたことで、最終的には逮捕されて科学的去勢を施されてしまう。挙句に四十一歳という若さで自ら命を断つことになるわけで、どうしてもヒューマンドラマ寄りにしたい制作サイドの気持ちはわからないでもない。
しかし、そのドラマもチューリングの天才的数学者としての部分があってこそ。だから、その天才っぷりや暗号解読の描写をがっつりと見せてくれないことには何とも物足りないのだ。
ちなみにプロットとしてひとつ気になったのは、装置完成後にチューリングが下した決断である。
エニグマを解読したことがドイツにばれてはその苦労が意味のないものになってしまう。よってエニグマから得る情報を取捨選択し、より重要な情報のみ対応していくべきだというのである。これは逆にいうと、戦略的に重要でない情報は、多少の犠牲が出るとわかっていても、あえて味方にも教えずにスルーするというのだ。
これ、見る人の価値観でまったく意見が分かれる重要なところだし、暗号解読チームの中でも意見が対立する見せ場の一つのはずだが、意外にあっさり意見がまとまり、国も素直にそれに応じるのがやや違和感のあるところである。ドイツの作家シーラッハなどは、まさにこのテーマひとつで『テロ』を書いたほど重いテーマなのだが。
ということでカンバーバッチの名演技は見る価値ありだが、ヒューマンドラマとしてはまずまずだろう。歴史スリラーや暗号興味で見る人はあまり期待せぬように。
日本では2015年公開。監督はモルテン・ティルドゥム、主演は傲慢な天才役をやらせたらピカイチの(笑)ベネディクト・カンバーバッチ。
ときは1939年。イギリスがドイツに宣戦布告した年のこと。数学者アラン・チューリングは政府暗号学校が置かれるブレッチリー・パークを訪れ、デニストン中佐の指揮の下、数名の仲間とチームを組み、ナチスの暗号機エニグマの解読に挑むことになる。
朝から晩まで暗号の解読に励むメンバーたち。だがチューリングだけはひとり暗号解読装置の設計に没頭していたため、両者の間には溝が深まってゆく。だが後から加わったクラークがチューリングとメンバーの中をとりもつことで、チームは徐々に結束、ついに装置は完成した。
だがドイツ軍は暗号のパターンを毎日変えるため、装置の処理が追いつかない。業を煮やしたデニストンは装置の破棄とチューリングの解雇を命じる。仲間の協力でこれを回避したチームだったが、問題はそれだけではなかった。両親から仕事を辞めろと迫られるクラーク、チームにかけられるスパイ容疑、そしてチューリング自身に隠された秘密などなど。
そんななか、チューリングは通信を傍受する役目の女性職員の話から、ついに暗号解読のヒントを思いつく……。

ううむ、まずまず楽しめたけれど、チューリングの天才っぷりや暗号解読についての見せ場がそれほどではないのが残念。
確かにチューリングという人物に注目した場合、数学者としての偉業もさることながら、その不遇な生涯に目を奪われる。自己中心的な性格や性的嗜好が災いしたことで、最終的には逮捕されて科学的去勢を施されてしまう。挙句に四十一歳という若さで自ら命を断つことになるわけで、どうしてもヒューマンドラマ寄りにしたい制作サイドの気持ちはわからないでもない。
しかし、そのドラマもチューリングの天才的数学者としての部分があってこそ。だから、その天才っぷりや暗号解読の描写をがっつりと見せてくれないことには何とも物足りないのだ。
ちなみにプロットとしてひとつ気になったのは、装置完成後にチューリングが下した決断である。
エニグマを解読したことがドイツにばれてはその苦労が意味のないものになってしまう。よってエニグマから得る情報を取捨選択し、より重要な情報のみ対応していくべきだというのである。これは逆にいうと、戦略的に重要でない情報は、多少の犠牲が出るとわかっていても、あえて味方にも教えずにスルーするというのだ。
これ、見る人の価値観でまったく意見が分かれる重要なところだし、暗号解読チームの中でも意見が対立する見せ場の一つのはずだが、意外にあっさり意見がまとまり、国も素直にそれに応じるのがやや違和感のあるところである。ドイツの作家シーラッハなどは、まさにこのテーマひとつで『テロ』を書いたほど重いテーマなのだが。
ということでカンバーバッチの名演技は見る価値ありだが、ヒューマンドラマとしてはまずまずだろう。歴史スリラーや暗号興味で見る人はあまり期待せぬように。