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 久々に梶龍雄を一冊。ものは『連続殺人枯木灘』。
 太平洋戦争末期のこと。焼津港から前線に向かう貨物船が消失した。陸軍司令部からの密命を受け、新開発の武器や研究員を積載していたが、その存在も極秘にされていたため、敵潜水艦あるいは機雷による沈没と判断され、その事実も歴史に埋もれていった。
 それから三十年後。和歌山県枯木灘の山中で、ある昆虫マニアが何者かに襲われて命を落とす事件が起こる。友人の宇月与志雄は事件現場を訪れ、関係者から村の人々から話を聞いて回るが、その周囲に不穏な動きが起こる……。

 連続殺人枯木灘

 梶龍雄の作品を読むのはおそらくこれが九作目だが、これまでの作品の中ではけっこう異色作の部類だろう。なかには『大臣の殺人』などという正真正銘の異色作もあるが、まあ、あそこまではいかないにしても、知らずに読めば梶作品とは思えない一作だった。

 一般に梶作品の魅力は謎と論理に忠実な本格であることが挙げられるだろう。加えて初期のものは過去の出来事、とりわけ戦争が現代に暗い影を落としているものが多く、代表作といわれるものほど叙情性も豊かである。
 本作も戦争を扱っており、その意味ではお得意のパターンといえないこともないのだが、その絡み方は『透明な季節』や『海を見ないで陸を見よう』などとはまったく違う。
 ぶっちゃけ本格ミステリというより、謀略小説や冒険小説のノリなのである。前半はそれでも本格風といえなくもないが、後半ではある計画がスタートすることで一気に弾け、いったい梶先生どうしたのかと思うほどだ。

 ただ、事件の鍵を握る部分では、きちんとトリックや意外な真犯人を用意しており、結局これがやりたかったから、謀略小説や冒険小説の衣を借りたのだろうとは推察できる。
 とはいえ序盤で少々風呂敷を広げすぎであり、この物語にそこまで謀略小説的な設定が必要だったのかは疑問である。
 結果としてなんともちぐはぐな印象が強く、駄作とまではいわないが、トータルでは他の傑作に一歩も二歩も譲る出来となった。



テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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