Posted in 09 2017
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ドロシー・B・ヒューズ『青い玉の秘密』(論創海外ミステリ)
ドロシー・B・ヒューズの『青い玉の秘密』を読む。
帯の惹句によると本作はスパイ小説とスリラーを融合させた作品。しかしながらこれがデビュー作、しかもタイトルがなんだか子供向けミステリっぽいのでやや不安を覚えてしまうところだが、以前に読んだ『孤独な場所で』はシリアルキラーの心理を描いたなかなか見事な犯罪小説だったので、まあ、さすがに大外しはあるまいと手に取った次第。
こんな話。
元女優のデザイナー、グリゼルダは仕事でニューヨークを訪れることになったが、そこへ別れた夫のコンがしばらくニューヨークを離れるので、アパートを使ってかまわないと申し出る。
快くその申し出を受けたグリゼルダだったが、ある夜、帰宅途中で双子の若者に声をかけられ、そのままアパートへ押入られてしまう。二人の目的は青いビー玉だと言われたものの、彼女にはまったく心当たりがなく……。

これはまた何とも落ち着かない作品である。どうやら本筋は、世界の富を左右するとまで言われる“青い玉”の争奪戦らしいのだが、ストーリーらしいストーリーもなく、この“青い玉”をめぐっての敵味方入り乱れての駆け引きが繰り返される。
正直、出来映えについてはかなり荒っぽい。前後で設定が矛盾していたり、“青い玉”の秘密もスッキリしなかったり、ラストもこれでいいのかと思うやっつけ具合である。
普通なら期待外れで終わるところだが、それをかろうじて踏みとどまらせているのはキャラクターの面白さ。『孤独な場所で』もそうだったが、人物造形や描き方がなかなか個性的なのである。
特に双子の存在感はずば抜けている。ぱっと見はハンサムな若者で礼儀も正しいのだが、実は人を殺すことなど何とも思わない人種。二面性を持つだけならよくある話だが、この双子が面白いのは、その暗黒面がしょっちゅう顔を出すそのアンバランスさ。いつ双子が爆発するのかという、いやーな不安感。それでいて一周回った感じの、そこはかとないユーモアまで感じられるのが魅力的だ。
というわけで何とも評価に困る変な作品である。『孤独な場所で』も含め、この人の作品はひとつの物差しでは計りきれないところがありそうなので、できれば他の作品も読んでみたいところだ。
帯の惹句によると本作はスパイ小説とスリラーを融合させた作品。しかしながらこれがデビュー作、しかもタイトルがなんだか子供向けミステリっぽいのでやや不安を覚えてしまうところだが、以前に読んだ『孤独な場所で』はシリアルキラーの心理を描いたなかなか見事な犯罪小説だったので、まあ、さすがに大外しはあるまいと手に取った次第。
こんな話。
元女優のデザイナー、グリゼルダは仕事でニューヨークを訪れることになったが、そこへ別れた夫のコンがしばらくニューヨークを離れるので、アパートを使ってかまわないと申し出る。
快くその申し出を受けたグリゼルダだったが、ある夜、帰宅途中で双子の若者に声をかけられ、そのままアパートへ押入られてしまう。二人の目的は青いビー玉だと言われたものの、彼女にはまったく心当たりがなく……。

これはまた何とも落ち着かない作品である。どうやら本筋は、世界の富を左右するとまで言われる“青い玉”の争奪戦らしいのだが、ストーリーらしいストーリーもなく、この“青い玉”をめぐっての敵味方入り乱れての駆け引きが繰り返される。
正直、出来映えについてはかなり荒っぽい。前後で設定が矛盾していたり、“青い玉”の秘密もスッキリしなかったり、ラストもこれでいいのかと思うやっつけ具合である。
普通なら期待外れで終わるところだが、それをかろうじて踏みとどまらせているのはキャラクターの面白さ。『孤独な場所で』もそうだったが、人物造形や描き方がなかなか個性的なのである。
特に双子の存在感はずば抜けている。ぱっと見はハンサムな若者で礼儀も正しいのだが、実は人を殺すことなど何とも思わない人種。二面性を持つだけならよくある話だが、この双子が面白いのは、その暗黒面がしょっちゅう顔を出すそのアンバランスさ。いつ双子が爆発するのかという、いやーな不安感。それでいて一周回った感じの、そこはかとないユーモアまで感じられるのが魅力的だ。
というわけで何とも評価に困る変な作品である。『孤独な場所で』も含め、この人の作品はひとつの物差しでは計りきれないところがありそうなので、できれば他の作品も読んでみたいところだ。