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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


Posted in 11 2017

笹沢左保『どんでん返し』(祥伝社ノン・ポシェット)

 笹沢左保の『どんでん返し』を読む。最近読んでいた初期長編から離れて、これは中期に刊行された短編集である。まずは収録作。

「影の訪問者」
「酒乱」
「霧」
「父子(おやこ)の対話」
「演技者」
「皮肉紳士」

 どんでん返し

 どんでん返しがテーマの短編集。しかも全編、二人の登場人物の会話だけで構成されており、なかなか技巧的でアグレッシブな試みである。
 ただ、技巧的ではあるし、どれもきちんとオチを工夫してあるのだけれど、いかんせん会話だけだといろいろ制限が多くなり、どうしても先が予想しやすいのが惜しまれる。それでも何作かはこちらの予想を超えるものもあって、まずまず悪くない短編集である。
 なお、タイトルにまで“どんでん返し”とつけるのは、いくら何でもハードルを上げすぎじゃないかな(苦笑)。

 以下、作品ごとの感想など。

 「影の訪問者」はかつて婚約していた男女の会話。深夜に突然やってきた女の不審な様子から、男が推理を披露して……という物語。会話ミステリー(そんなジャンルがあるかどうかは知らんが)の基本系みたいな作品である。それだけに予想されやすいところはあるのだが、サスペンスも高く、きちんとまとまった佳作。一幕ものの芝居みたいな雰囲気もよい。

 その基本形を捻ってあるのが「酒乱」。五十代の夫婦の会話だが、昔に起こったと思しき事件を二人で回想していくのだが、余韻も含めて本書のピカイチ。

 「霧」は心中を図ろうとする若い夫婦の会話。これは単純で驚きも少なくいまひとつ。

 「父子の対話」は「酒乱」に次ぐ出来の良さ。売れっ子弁護士になった息子とその父の会話だが、御都合主義が一ヶ所あるのはいただけないが、会話だけでこれだけの豊穣なストーリーを展開させる手腕が見事。

 「演技者」は夫の殺人を企む女優とその不倫相手の会話で始まり、後半は女優と捜査にあたる刑事の会話で締める。プロットに無理があり、本作だけ会話も都合三人で成り立たせているため、印象も弱くなってしまった。

 「皮肉紳士」は空港へ向かうタクシーの中で、大学教授に事件の相談をする刑事の話。これは会話ミステリというより安楽椅子もののアレンジ。なので会話ミステリとしての面白さには欠けるのが残念。


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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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