Posted in 01 2018
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ロバート・クレイス『約束』(創元推理文庫)
ロバート・クレイスの『約束』を読む。警察犬マギーと警察官スコットの活躍と友情を描いた前作『容疑者』の続編。だが、本作はスコット&マギーのシリーズというだけでなく、同時に著者もうひとつのシリーズキャラクター、私立探偵エルヴィス・コール&ジョー・パイクが登場するダブル主演作でもある。
こんな話。
スコットと警察犬のマギーは逃亡中の殺人犯を追跡していた。しかし、ある住宅地で容疑者と思われる死体と大量の爆発物を発見してしまう。
時を同じくして、私立探偵コールもまたその住宅地を訪れていた。失踪した会社の同僚を探してほしいという依頼の調査のためだったが、スコットッたちの捜査する現場から逃げ出した男を追いかけようとしたことで、警察からいらぬ疑惑の目を向けられてしまう。しかし、失踪事件の陰に大きな犯罪があることを感じていたコールは、あくまで独自に調査を続けようとする。
一方、現場から逃げ出した男を直前に目撃していたことから、スコットの身には危険が迫っていた……。

ずいぶん上からの言い方になってしまうが(苦笑)、ロバート・クレイスもいつの間にかすっかり巧い作家になったものだ。著者が複数のシリーズを融合させるという手法も、最近ではそれほど珍しいものではなくなってしまったが、それでもやはり難しい作業であることにに変わりはないだろう。
特にクレイスの場合、シリーズの主人公がそれぞれパイクとマギーという相棒を連れていることから、よけいやりにくいはずで、それを案外さらりとやってのけているのが見事。
単に事件解決までを描くだけではなく、描写の配分という問題もあるだろうし、クレイスは比較的強いメッセージ性を込める作家だから、そういう部分の盛り上げも考えると、これは相当にレベルの高い作品なのである。
『容疑者』に比べると本作は事件そのものも魅力的だ。
ストーリーはエイミーという女性化学技術者の失踪事件が軸になるのだが、関係者の多くが隠し立てをする状況。そのなかでコールはパイクやジョン・ストーン、そしてスコット&マギーらの協力を得て、ひとつずつ新たな事実を確かなものにしていく。そのなかでエイミーという女性の本当の姿も明らかになっていくのは、常套手段といえば常套手段だが、そこからさらに捻って、この失踪事件の様相そのものが揺らぐような展開にもっていく。
簡単に物事が進みすぎるきらいもないではないが、こういうストーリーの出し入れというか緩急というか、適度な焦燥感と爽快感の混じり具合もクレイスの巧いところだ。
ただ、『容疑者』のような犬と人の感動友情ストーリーは今回さすがに抑え気味だ。毎度毎度あんな感動的な出来事が同じ当事者に起こるわけがないので、まあ、そこは致し方あるまい。
とはいえマギーの見せ場や犬好きには堪えられないシーンもちゃんと用意されているし、場面ごとのクオリティはいささかの劣化もない。前作が気に入った人なら本作も必読である。
今後はシリーズキャラクターをいろいろ取り混ぜた展開もあるようで、ますます楽しみになってきたクレイスの作品。積ん読も少し消化していくべきかな。
こんな話。
スコットと警察犬のマギーは逃亡中の殺人犯を追跡していた。しかし、ある住宅地で容疑者と思われる死体と大量の爆発物を発見してしまう。
時を同じくして、私立探偵コールもまたその住宅地を訪れていた。失踪した会社の同僚を探してほしいという依頼の調査のためだったが、スコットッたちの捜査する現場から逃げ出した男を追いかけようとしたことで、警察からいらぬ疑惑の目を向けられてしまう。しかし、失踪事件の陰に大きな犯罪があることを感じていたコールは、あくまで独自に調査を続けようとする。
一方、現場から逃げ出した男を直前に目撃していたことから、スコットの身には危険が迫っていた……。

ずいぶん上からの言い方になってしまうが(苦笑)、ロバート・クレイスもいつの間にかすっかり巧い作家になったものだ。著者が複数のシリーズを融合させるという手法も、最近ではそれほど珍しいものではなくなってしまったが、それでもやはり難しい作業であることにに変わりはないだろう。
特にクレイスの場合、シリーズの主人公がそれぞれパイクとマギーという相棒を連れていることから、よけいやりにくいはずで、それを案外さらりとやってのけているのが見事。
単に事件解決までを描くだけではなく、描写の配分という問題もあるだろうし、クレイスは比較的強いメッセージ性を込める作家だから、そういう部分の盛り上げも考えると、これは相当にレベルの高い作品なのである。
『容疑者』に比べると本作は事件そのものも魅力的だ。
ストーリーはエイミーという女性化学技術者の失踪事件が軸になるのだが、関係者の多くが隠し立てをする状況。そのなかでコールはパイクやジョン・ストーン、そしてスコット&マギーらの協力を得て、ひとつずつ新たな事実を確かなものにしていく。そのなかでエイミーという女性の本当の姿も明らかになっていくのは、常套手段といえば常套手段だが、そこからさらに捻って、この失踪事件の様相そのものが揺らぐような展開にもっていく。
簡単に物事が進みすぎるきらいもないではないが、こういうストーリーの出し入れというか緩急というか、適度な焦燥感と爽快感の混じり具合もクレイスの巧いところだ。
ただ、『容疑者』のような犬と人の感動友情ストーリーは今回さすがに抑え気味だ。毎度毎度あんな感動的な出来事が同じ当事者に起こるわけがないので、まあ、そこは致し方あるまい。
とはいえマギーの見せ場や犬好きには堪えられないシーンもちゃんと用意されているし、場面ごとのクオリティはいささかの劣化もない。前作が気に入った人なら本作も必読である。
今後はシリーズキャラクターをいろいろ取り混ぜた展開もあるようで、ますます楽しみになってきたクレイスの作品。積ん読も少し消化していくべきかな。