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 若狭邦男の『探偵作家発掘雑誌 第一巻』を読む。
 著者は知る人ぞ知る探偵小説とカストリ雑誌の研究家。特に戦後の探偵雑誌を含むカストリ雑誌の蒐集においては日本でも有数の存在ではないだろうか。その業績はすでに『探偵作家追跡』、『探偵作家尋訪』、『探偵作家発見100』という三冊にまとめられているけれど、探偵小説に詳しい人なら、おそらくこの三冊は読んでいるだろうし、中身の凄さは皆様ご存知のとおり。

 本書はそんな著者が、探偵作家メインできたこれまでの著書をさらに超え、カストリ雑誌全般を紹介する。最初は全カストリ雑誌を紹介するつもりだったらしいが、その苦行と責任感からまったく書けなくなり、自分の好きなものだけを紹介すればいいのだと考えてようやく完成したものらしい。

 探偵作家発掘雑誌第一巻

 内容としては、雑誌の種類ごとに章立てし、発行号ごとに掲載作品を紹介していくというもの。
 要は雑誌の目次を再掲するような形だが、それだけかというなかれ。この時点ですでに大変な労力と資金がかかっており(蒐集という点で)、その資料性だけで大変な価値がある。
 カストリ雑誌などもともと学問の対象にもならない読み捨ての俗悪雑誌。用紙も粗悪なものだし、残っているだけでも大変なことなのだが、それがこうしてコレクションという形でまとまっていることが奇跡である。

 本文はデータ中心なので、確かに読む楽しさとは別なのだが、それでも発行元や発行人の動向、雑誌の成り立ち、作家の紹介など、こちらが逆立ちしてもわからない事実をいろいろと紹介してくれて非常にためになる。
 なんせ今回は探偵小説だけでなく、エロ系や実話系、怪奇系など、雑誌も多くのジャンルにわたっている。探偵小説の章はもちろん興味深いのだが、むしろそれ以外、あまり興味がない分野の雑誌が面白い。たとえば青春ミステリーの乱歩賞作家・小峰元あたりが「狂艶」なんていう雑誌に書いていたりする。後のメジャー作家が超マイナーなカストリ雑誌に書いていたという事実がいくつも出てきて驚かされるし、そういう作品はすごく読みたくなってくるではないか。
 ほかにも話のネタレベルだが、小酒井喜久雄とかいう作家がいたり、普通に笑えるし(笑)。そういえば『探偵作家追跡』 でも香山風太郎なんていうのが紹介されていた。

 また、中身とは別の話だが、実は『探偵作家発見100』の感想をアップしたとき、本の造りについていくつか気になる点を指摘したのだが、本書で少し改善されていたのはよかった。特にレイアウトについてはずいぶん見やすくなったのではないだろうか。
 また、ありがたいことにその際は著者ご自身からもコメントをいただいた。本書には続刊が予定されており、そちらに二冊合わせた分の人名索引がつく予定であることも教えてもらったのだが、残念ながらまだ第二巻は出版される気配がないようだ。まあ、大変な作業であることはわかるので、時間はかかってもかまわないから、ぜひ刊行してほしいものである。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌



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