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 ジョン・ロードの『吸殻とパナマ帽』を読む。
 本書は東京創元社の〈現代推理小説全集〉の一冊として刊行されたもの。先日の『電話の声』同様、ひとりジョン・ロード祭りの一環だが、とりあえずこれで手持ちの邦訳ジョン・ロードは打ち止め。新生堂〈世界名作探偵小説集〉からクロフツ等との併録で出た『トンネルの秘密』が唯一未所持だが、ページ数から予想するに抄訳っぽいし、これはそのうち縁があれば、というところか。

 さて『吸い殻とパナマ帽』だが、こんな話。
 英国はアスターウィッチ市のはずれ、テムプル農場へと続く道の途中で一人の男性が死体となって発見された。遺体の様子から男は殺害されたことが判明し、所持していた免許証から菓子工場で運転手を務めるダンスタブルであると判明する。さっそくロンドン警視庁からジミー・ワグホーン警視が駆けつけ、地元警察のヒックリング警部と協力して捜査が行われることになった。
 手がかりは二つ。現場で見つかった煙草の吸い殻、逆に当日ダンスタブルがかぶっていたはずのパナマ帽が見当たらないという事実である。この二つの手がかりの追跡、そして関係者への聞き込みを中心となって捜査が進む。するとダンスタブルの娘と菓子工場主ロジャーの養子でるケネスが密かに婚約していたものの、それが最近破談になったという事実が明らかになる。どうやらダンスタブルはそれをネタにケネスを強請っていたようで……。

 吸殻とパナマ帽

 相当な駄作を覚悟していたのだが、ううむ、確かにいろいろ弱点はあるのだけれど、けっこう面白いではないか。
 本作では二つの殺人事件が扱われており、仰天するほどではないけれども、その真相はまずまず意表をつくものとなっており、やはりジョン・ロードのプロット作りの巧さは見直すべきであろう。
 被害者ダンスタブルの強請り屋という裏の顔、そこから容疑者が広がっていくのかと思いきや、早々に最重要容疑者が殺害されるという展開は予想外で、この二つの事件の関連性が面白い。これが単独の事件だとかなり平凡な作品に終わってしまう可能性は大きかったと思うが、それを組み合わせることで魅力的なプロットにまで持っていっている。

 ただ、その魅力的なプロットを、例によって面白いストーリーに仕立てるのが下手というか(泣)。特に前半はかなり辛くて、特に警察がダンスタブル殺害事件での聞き込みの最中に、ロジャーとケネスの過去について知る件はあまりに唐突すぎる。
 捜査のこの時点でこの膨大な情報を入手するという不自然さ、しかもダンスタブル殺害事件にそこまで深く関わるわけではない。むしろ第二の事件との関わりのほうが強くて、明らかに著者がこの情報を盛り込む箇所を間違えた感がある。
 ロードの弱点の退屈さというのは、もちろん刺激やインパクトの不足という面もあるが、どちらかというとこういう重要なネタのストーリーへの落とし込みの適当さが起因しているのではないだろうか。

 あと、これまで退屈さの要因のひとつとして思っていた、執拗な推理の繰り返しの部分だが、続けてロード作品を読んでいると正直それほど気にならなくなってきた。もちろんもう少しコンパクトにまとめたほうがよりいいとは思うが、それでも要素としてみれば本格探偵小説として無くてはならぬ部分であり、そう意味ではこれは欠点ではなく個性と見たほうがよいだろう。

 ということで欠点はあるものの『吸い殻とパナマ帽』が意外な拾いものだったことは大きな収穫。もしかすると『見えない凶器』や『エレヴェーター殺人事件』も再読するとその評価も変わるかもしれないが、ううむ、どうなんだろう(苦笑)。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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