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 カトリーヌ・アルレーの『死ぬほどの馬鹿』を読む。
 アルレーはフランスを代表するサスペンス作家。それまで勧善懲悪が当たり前だったミステリに、完全犯罪を成功させる作品『わらの女』を発表し、一躍その名を知られるようになった。
 最近は名前を聞くことも少なくなったが、ひところは創元推理文庫で定期的に翻訳されるほど人気があり、その割には『わらの女』以外の作品はそれほど知られてはいなかったりと、なかなか我が国における立ち位置も微妙である。管理人もまだまだ未読が多く、少しずつ積ん読を崩していこうと手に取ってみた次第。

 こんな話。戦争帰りの三十路男ロベールは、戦死した戦友の姉夫婦と出会い、フランスの田舎町で暮らすことになった。そこで姉夫婦の使用人ミヌーと出会い、やがて二人は結婚する。しかし、孤独を嫌って結婚したロベールと、虚栄心のためだけに結婚したミヌーが心を通じ合わせることなど到底無理な話であり、すぐに冷えきった関係に陥ってしまう。
 そんなる日、ミヌーは放浪を続けるヒッピーたちを家に招き、そのなかの一人ブラディと関係をもってしまうが……。

 死ぬほどの馬鹿

 主要人物はロベールとミヌー、ブラディ、小間使いの老婆、ほぼこれだけである。そのなかで三角関係を描くのだから、そのままストレートに悲劇の終幕に向かうのかと思いきや、実は本作のストーリー展開を的中させるのは、そう容易ではない。
 とにかく登場人物たちが個性的すぎるというか、むしろ異常人格者といってよい者までいる始末。そのため先の言動がまったく読めず、話は思いもしない方向に転がってゆく。

 戸惑うのは読者ばかりではない。
 作中の登場人物もまた然りで、彼らのコミュニケーションは言葉こそ交わすものの、互いの心情はまったく理解できていない。というか相手を理解しようともしない。まずあるのは自分のことばかりで、それが希薄かつ混沌とした関係性を生じさせ、悲劇を招くのである。
 実はそこにこそ本作の大きなテーマがあるのだが、ただ、あまりに極端な設定に走ったせいか、思ったほどには響いてこないのが残念。読者としては“人間は理解しあえない生き物だ”と嘆くより、理不尽な言動にひたすら困惑するばかりなのである。
 とはいえ著者もそれは意図してのことなのだろう。そんな読者の理解を助けるかのような(同時に読者を驚かせるための)仕掛けをちゃんと用意しており、これが本作を単なる三角関係による悲劇以上のものにしている。まあ、こちらも作りすぎの嫌いはあるのだが。

 ということで、かなり強引なところの目立つ本作だが、イレギュラーすぎるストーリーや登場人物の造形など、興味深い点も多い。細やかな心理描写でネチネチと不安を煽る手並みなどはお手の物という感じだし、アルレーファンはもとより、ちょっと変わったサスペンスをお好みなら。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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