少しはゴールデンウィークらしきことでもと思い、天気がよかったので高崎まで車を飛ばす。目的は土屋文明記念文学館で開催されている企画展「ミステリー小説の夜明けー江戸川乱歩、横溝正史、渡辺啓助、渡辺温ー」展である。

最初は探偵小説と土屋文明もしくは群馬県との関連がわからず、「なぜここで探偵小説の企画展が?」と思っていたのだが、公式サイトなどによると、渡辺啓助が昭和二十年代に二年ほどを群馬の渋川で過ごし、そこで執筆や地元有志らとの同人活動を行なっていたらしい。なるほど渡辺啓助はわかったが、じゃあ実弟の渡辺温や乱歩、正史はどうなんだという話で、どう考えても渡辺啓助ではもたないから無理やり関係ある作家を引っ張ってきて、「ミステリー小説の夜明け」としてまとめた感は無きにしもあらず(苦笑)。
まあ、堅いことは言いますまい。乱歩や正史クラスならともかく、渡辺啓助や渡辺温がこういう文学展で取り上げられること自体なかなか珍しいので、ここはありがたく鑑賞させていただく。
展示内容はごくオーソドックスな文学展仕様である。作品が収録された雑誌や著書、直筆原稿などが中心だが、企画展そのものの規模が圧倒的に小さく、また、乱歩や正史関連ではほぼ新味がないのが残念。
とはいえ先ほども書いたように渡辺兄弟関係のの展示は珍しく、そこがチェックポイントか。特に渡辺温の直筆原稿を生で見たのはおそらく初めてかもしれない(兄とは異なり、けっこう可愛い字を書く)。他では渡辺啓助のラジオ番組出演時の音声が面白かった。
ということで展示内容については不満はいくつかあれど、まあこんなものだろうとは思うのだが、図録だけはお粗末だった。たった12ページ、しかも中身もパンフレットレベルで、これで金を取りますかというレベル。せっかく関係各位に協力を取りつけて実現した企画なのだろうから、もう少し内容と価格についてきちんと相場感を勉強してもらいたいものである。というか関係各位はこの図録の監修とかにはタッチしなかったのかしら?