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 坂口安吾の『不連続殺人事件』を読む。これがおそらく四度目ぐらいの再読である。新潮文庫で復刊されたのを機に久々に読んでみたのだが、やはりこれは傑作としか言いようがない。パズルやゲームとしての本格探偵小説を愛した坂口安吾は、読むだけではおさまらず、本作をはじめとしていくつかの探偵小説を残したが、やはりそのなかにあっても『不連続殺人事件』は別格でああろう。

 山中深くで酒造業を営む歌川家。その跡取り息子にして詩人の歌川一馬があるとき東京を訪れ、私(友人の作家・矢代)に、一夏をこちらで過ごさないかと声をかけてきた。
 もともと歌川家には疎開だったり何かと親交のある者が集まってはいたが、それに応じられない理由が私にはあった。私の妻・京子はもともと一馬の父・多聞の妾であり、それを強奪する形で結婚していたからだ。しかし、数日後、一馬から犯罪を予期させるような不吉な手紙が届き、止むを得ず私は京子、そして素人探偵として仲間内で知られる巨勢博士を伴い、歌川家を訪れる。
 だが、そこに集まっていたのは日頃からトラブルの種を播いてばかりいるような、素行不良の文人画人の面々。果たして悲劇の幕が開いた……。

 不連続殺人事件

 読めば読むほど面白くなる探偵小説もそうそうないが、本作はその数少ない例外。初めて読んだときこそ登場人物たちの多さと彼らの言動の破天荒さ・淫猥さに辟易したのだが、読むたびにその真価がわかり、凄い作品であることを実感できる。
 だいたい今挙げた登場人物云々にしても、それ自体がまさしく安吾の狙いであったのに、そこを汲み取れないこちらの甘さ、理解の低さ、加えてそれを楽しめない人生経験の未熟さがあった。

 何より凄いのは、安吾があくまで謎解きゲームとして本作を書き、犯人当ての懸賞までやっている作品だというのに、ゲームゲームしたところがなく、むしろそういうところを超越した愛憎邪淫のドラマとしての面白さを持っていることだろう。
 それなのに最後にはきっちり本格探偵小説としてすべてをクリアにさせる。まさにオールタイムベストテン級。こんな幸せな作品は数えるほどしかない。

 あ、そういえば映画版は観ていなかったな。あの人も重要な役で出ているし、これもそのうちに。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



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